ベアトリスとベネディクト (ベルリオーズ)
Béatrice et Bénédict (Berlioz)
作品紹介 (ベアトリスとベネディクト)
このベアトリスとベネディクトは日本では殆ど馴染みのないオペラですが、2015年に松本のセイジ・オザワフェスティバルで上演されたため、俄かに脚光を浴びました。 (注)当初は小澤征爾さんが指揮予定でしたが、怪我のため降板しギル・ローズ氏に変更
しかし、予習しようにもDVDがない! 今どきDVDが1枚もないオペラなんて、どんだけマイナーなのでしょう。(※追記:2017年に、前年のグラインドボーン音楽祭の上演が初のDVD化され、日本語字幕もついて販売されています)
シェイクスピアの喜劇「から騒ぎ」が原作ですが、フランス語の台詞がたっぷり入った「オペラ・コミック」ですので、通常のオペラと思って聴くとちょっと違和感があるかもしれません。この台詞の多さはオペラ・コミックというよりオペレッタに近いのでは、と思ってしまいますが、この作品が作られる数年前にオッフェンバックがオペレッタの元祖となる「地獄のオルフェ(天国と地獄)」を初演して爆発的な人気を得てパリを席巻しており、そういう時代に生まれた作品です。
しかし台詞の多い喜劇であるにも関わらずドタバタ感はなく、美しい音楽、叙情的なアリアやデュエットに彩られた洒落たシェイクスピア劇という趣。シチリアの舞曲や結婚式の合唱などベルリオーズらしいノスタルジックなメロディーも豊富で、ときに静謐な崇高ささえ感じます。
2013年のアン・デア・ウィーン劇場でのイケてる演出での上演が収録されているようなので、是非DVD化してほしいです。
あらすじ (ベアトリスとベネディクト)
2組のカップルが主役。1組は「ベアトリスとベネディクト」お互い気があるのに素直になれず喧嘩ばかり。「あんな人と結婚するくらいなら修道院に入る方がマシ!」「万一彼女と結婚するようなことがあれば、『結婚した男ベネディクトここにあり』と看板を掲げてやるさ!」と心とは裏はらの悪態ばかり。
もう1組は「エローとクラウディオ」で、こちらは相思相愛で結婚間近。この熱々カップルに軍の上司やエローの父や侍女が結託して、なんとかベアトリスとベネディクトを結婚させようと、それぞれの耳に相手が恋焦がれているという噂を吹きこみます。企みは成功して最後はめでたく二人がくっつきハッピーエンド。皆に「結婚した男ベネディクトここにあり!」と笑われて、二人は「今日は休戦とするけど、でも明日になったらまた敵よ!」と負け惜しみを言って幕となります。
お薦め動画
●全曲(音声のみ) フランス語台詞あり版
1991年リヨン歌劇場 指揮:ジョン・ネルソン、スーザン・グラハム、ジャン=リュック・ヴィアラ、ガブリエル・バキエ
●2013年 アン・デア・ウィーン劇場での上演のトレイラー(音楽は2幕の婚礼の合唱)
●1幕 エローと侍女ユルシュールの2重唱" Nuit paisible et sereine"(静かな清き夜) アン・デア・ウィーン劇場
●1幕 エローのアリア "Je Vais le Voir" (あの人に会える) キャスリーン・バトル
恋人クラウディオの帰還を喜び、愛を歌うアリア。
●1幕 ベネディクトのアリア "Ah! Je Vais L'aimer"(ああ、彼女を愛そう) ロベルト・アラーニャ
それまで「ベアトリスなんて!」と鼻で笑っていたベネディクトが、彼女が自分を好きだと聞いて急に舞い上がって歌うロンド。
●1幕 ベアトリスとベネディクトの喧嘩の2重唱 "Comment le dédain pourrait-il mourir?"
2009年シャンゼリゼ劇場でのコンサート形式上演(指揮:コリン・デイヴィス) ジョイス・ディドナート、チャールズ・ワークマン
イヤミを言ったりからかったり、喧嘩ばかりの二人。
この喧嘩の2重唱を、テニスの打合いしながら歌ってて可笑しい!(アン・デア・ウィーン劇場)マレーナ・エルンマン、ベルナール・リヒター
●2幕 ベアトリスのアリア "Dieu? Que viens-je d'entendre?" (ああ、何ということを聞いてしまったのでしょう) ジョイス・ディドナート
ベネディクトの自分への想いを知って、彼を愛していることに気づき切々と歌うアリア。
●2幕 ベアトリス、エロー、ユルシュールの3重唱 " Je vais d'un coeur aimant " ジョイス・ディドナート、ナタリー・マンフリーノ、エロディ・メシャン
恋を意識し始めたベアトリスをエローと侍女がからかい、それぞれ愛する人との結婚への憧れや不安を歌う。
●2幕 婚礼を祝う合唱 "Viens, de l'hyménée" 2010年 パリ・オペラコミック座