サンドリヨン (マスネ)
    Cendrillon (Massenet)


作品紹介 (サンドリヨン)

マスネは、とてもバラエティに富んだ様々な異なる作風のオペラを作っているのですが、この「サンドリヨン」はシンデレラのお伽話をほぼ忠実にオペラ化した、和み系のメルヘン。

マノンやタイスのようなとてもお子様には見せられないお話が多い中にあって、ファミリー向けを意識したと思われ、ストーリーも音楽も優しく夢見がちな、今で言えばディズニー風のオペラです。

また、マスネには登場人物が男性だけという変わったオペラもあるのですが(ノートルダムの曲芸師)、これはその反対に女性だらけ。主役のサンドリヨン(シンデレラ)と、ママ母、おバカ姉二人の他に、妖精(魔法使いのお婆さんではなくキラキラの妖精)とその子分、そして憂鬱気質の王子様まで女性が演じるのですから、女声を堪能すべく作品です。

サンドリヨンのしっとりと叙情的なアリア、妖精の煌びやかなコロラトゥーラ、義母姉のコミカルなアンサンブル、そして王子様との女声同士での愛の二重唱・・と女声の優美な歌が続きます。オーケストラもフルート等の木管楽器の優しい音色が多く、途中で入るバレエの華やかさも楽しさが弾みます。

王子様をテノールが歌う上演やCDもありますが、マスネは王子役に「ファルコン」と呼ばれる低音も響く暗い声質のソプラノを指定しています。(ファルコンとは、19世紀フランスの伝説的ソプラノ、コルネリー・ファルコンにちなんでつけられた声種の名前)

長年サンドリヨンといえば、フレデリカ・フォン・シュターデのたおやかな歌唱と美貌とで知られてきましたが、近年はジョイス・ディドナートが持ち役にしていてDVDも発売されています。ディドナートはロッシーニのチェネレントラ(これもシンデレラの話)も持ち役にしてるので、イメージがゴッチャになるのですが・・



あらすじ(サンドリヨン)

アルティエール夫人のお屋敷、召使い達が夫人は嫌な人だと噂していると、夫人と再婚したパンドルフ氏が登場し、自分のせいで娘のリュセット(サンドリヨン:灰かぶり娘の意)が継母や姉にいじめられて可哀想だと嘆きます。 夫人と姉たちが宮殿の舞踏会に着飾って出かけて行った後、リュセットは「お姉様たちはなんて幸せなんでしょう・・私も行きたいけれど、ここで一人仕事をするさだめ・・」と淋しく歌いながら寝入ってしまうと、妖精が現れ彼女を美しいドレスに変身させます。目覚めて驚くリュセットに妖精は、ガラスの靴は家族に気づかれないよう守ってくれるが、魔法は真夜中までしか効かないと告げ、リュセットは必ず真夜中までに帰ってくると約束し喜んで出かけて行きます。

舞踏会で賑わう宮殿で、シャルマン王子は一人憂いに沈んでいます。妻を選ぶよう王に言われても、愛を知らない彼は孤独を感じるばかり。(ここで舞踏会のバレエが入ります) しかしリュセットが現れるとその美しさに一目で恋に落ち、愛の二重唱を歌います。しかし12時の鐘が鳴ると驚いてリュセットは駆け去り、王子は取り残されます。

家に戻ったリュセットは、ガラスの靴の片方を失くしてしまい、夢のような時間を思い出して歌います。帰ってきた継母たちは「王子様は見知らぬ女に誘惑されたが、拒否して死刑にしろと言った」と嘘を言い、リュセットはショックを受けます。パンドルフはリュセットに「故郷に戻って二人で暮らそう」と言いますが、リュセットは父を苦しめたくないと一人で出て行きます。

家を出たリュセットは魔法の森に行き、そこに彼女を探す王子も現れますが、魔法でお互いの姿を見ることができません。しかし声だけで愛する人であることに気づき、見えない相手に心からの思いを伝え合います。王子が生涯の愛を誓うと妖精が互いの姿を見えるようにし、愛の歓喜を歌う二人を魔法の眠りにつかせます。

森で倒れていたところを父に発見されたリュセットは、すべて夢だったと絶望しますが、継母たちが王子様がガラスの靴に合う姫を探していると言うのを聞き、夢ではないと知ります。宮殿の広間では多くの娘たちがガラスの靴を試しても履けず王子はガッカリしています。そこに現れたリュセットの足にピタリと合い、二人が再会を喜び合うと、アルティエール夫人は急に「私の愛しい娘よ!」と叫んでリュセットを抱きしめ、メデタシメデタシとなるのでした。



お薦め動画(サンドリヨン)

●1幕 サンドリヨンのアリア(音声のみ)  フレデリカ・フォン・シュターデの名唱です。
"Que mes soeurs sont heureuses"「お姉様たちはなんて幸せなんでしょう」と憐れな我が身を嘆く歌



●1幕 妖精が登場しサンドリヨンに魔法をかけるシーン。
1982年 モネ劇場 ブリット=マリー・アルーン、フレデリカ・フォン・シュターデ



●3幕 魔法が解け家に帰ってきたサンドリヨンのアリア "Enfin, je suis ici"(やっと帰ってきた)
フレデリカ・フォン・シュターデ



●3幕 王子とサンドリヨンの愛の二重唱(音声のみ)  マリリン・ホーン、フレデリカ・フォン・シュターデ
女声同士でもとてもドラマティックな美しいデュエットで、最後は妖精も加わって三重唱になり、異なる声質のソプラノ3人の競演が素晴らしい。



●全曲 2008年 オペラ・ザウド(オランダ)
有名劇団ではありませんが、なかなか良くできた公演で、歌手も皆役柄に合った立派な歌唱でこのオペラの魅力を十分味わうことができます。有名歌手だと気になる外見も、無名の方だとなぜか気にならんのだな。。



●2011年 ロイヤルオペラハウス公演 トレイラー
2018年にメトHDで上映予定と同じロラン・ペリーの演出、同じジョイス・ディドナートがサンドリヨン、アリス・クートが王子です。この上演はDVDが発売されています。



●お城のパーティーにサンドリヨンが到着するシーン 2013年 リセウ歌劇場
上記と同じプロダクションです。このプロダクションは2006年がプルミエであちこちでやってる古いものなのに、2018年にメトで「新制作」と銘打つのはどうなんでしょう・・?





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