ファウスト お薦め動画(1)
1975年 パリ・オペラ座 ニコライ・ゲッダ
ファウストのお薦め動画は、1975年パリ・オペラ座(指揮:マッケラス)、かつてLDで発売されていた名演です。
重厚な中に煌めきのあるオーケストラの音が美しく、何よりラヴェッリの演出が素晴らしい!
物語の舞台を中世から19世紀のパリに移しかえた演出は、当時としてはかなり前衛的だったのだそうですが、違和感がないどころか、むしろこの曲が作られた当時の風俗がかえって曲にぴったりで、本来の姿、という気さえします。
衣装や化粧が、ロートレックの絵画のようで、パリの香りに満ち、フランスオペラらしさ満点。ただし、1975年当時は新しすぎて批判が多く、あまり成功した公演ではなかったそうです。2001年に同じ演出で再演されていて、動画もありますが、やはりこの1975年の舞台の方がはるかによいです。
名歌手ゲッダとフレーニの両主役は、表現力豊かな艶のある声で素晴らしいですが、それに劣らず秀逸なのがメフィストフェレス役のフランス人、ロジェ・ソワイエ。
いかにも「パリジャン」という風のクールでダンディな悪魔ぶりで、声はあくまでソフトでフランス語の響きが甘く、立ち姿は美しく、なんとも粋で魅惑的なメフィストです。(誘惑されるマルトおばさんも、このメフィストなら、そりゃイチコロでしょう・・と納得)
ソワイエの歌うフランス語は、それは軽やかで夢のように美しい響きで、感動すると同時にある意味大変ショックでした。フランスオペラは本当はこうなんだ、フランス語が母国語でない人の歌では、本来の魅力は表現しきれはしないのだ、と。 外国人の歌った鈍重なメフィストとはまったく較べようもありません。。
ファウストとメフィストは、お揃いのタキシードにシルクハットといういでたちで旅に出ます。ファウストを見守るメフィストの眼差しが、いつも優しく幼子を見守るようなのが心憎い。
最後のシーンでも、絶望したファウストを、神の光に包まれたマルグリートから守るように、抱きかかえるメフィストが泣けます。(この最後の3重唱は、私がオペラの中で最も愛するシーンです)
そして、天上からの使いは、なんとまあ、裸足で石けり遊びをしながらユラユラと登場してくる少女。その穢れのない清らかさは、もう衝撃的でした!
演出によっては、最後に断頭台の刃が落ちてきたり、なんて残酷すぎるものもありますが(生首がコロコロなんてのまである〜) この舞台のラストは、まさにグノーに相応しい美しく優しい最後だと思います。
●金の仔牛の歌 ”Le veau d'or” 06:40〜 Roger Soyer メフィストのダンディぶり!
※金の仔牛の歌の歌詞とカタカナ読み、訳、解説を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●清らかなこの住まい ニコライ・ゲッダ
※清らかなこの住まいの歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●宝石の歌 ミレッラ・フレーニ
●2幕 ちょっとコメディ仕立て&パロディ(モーツァルト)の部分も見所。
こんな甘い声のメフィストは他にいません。これぞフランスオペラですね
●2重唱 ゲッダとフレーニ、大歌手二人の見事なデュエット
●教会のシーン この演出も粋ですねえ! なんて現代的でクールなんでしょう。
●フィナーレ 3重唱 シンプルですが歴史的名シーンだと思います。
●全曲はこちらから