ファウスト お薦め動画(2)
ロベルト・アラーニャ
最近フランスオペラの上演が増えていますが、ファウストもよく取り上げらるようになって嬉しい限りです。
以前は古臭いさえない演出も多かったけれど、最近のはなかなかいいですよ!意外に現代風な演出が合う作品なんですね。
このファウストのような叙情的な作品では、フランス語の言葉の美しさがとても生きます。グノーの優しく華麗な音楽と、フランス語の甘い響きが溶け合った美しさといったら!
その点で、現役の歌手でファウストといえば、やはりロベルト・アラーニャが最高だと思います。フランス語独特の発音が正しく美しく歌われてこその素晴らしさは何ものにも代えられません。
特にアラーニャの発音はとても明瞭で美しく、言葉を大切に歌っていることがよくわかります。彼のフランス語のディクション(発音)の素晴らしさは、フランス本国でも絶対的な評価を得ており、折り紙つき。そのうえ声の艶やかさ、男らしも抜群で、ファウストのオーラがありますね。
冒頭の爺さんからの変身シーンなど、ヨボヨボの辛気臭い爺さんが颯爽としたファウストに変身して登場すると、場内から拍手が沸くのが楽しい。 アラーニャのファウストはYouTubeにたくさんアップされているので、3つほどご紹介します。
また、この作品はメフィストフェレスがカッコイイことがとても大切です。洒脱でダンディーな悪魔でないと、魅力半減。
今はルネ・パーペやブリン・ターフェルがメフィストの当たり役ですが、私のイチオシはフランス人のポール・ゲ(Paul Gay)。最下に動画を載せていますのでどうぞご覧ください。
(1)
まずは2008年 オランジュ音楽祭、インヴァ・ムラとルネ・パーペと。
3人ともハマり役でなかなかベストのキャスティングだし、温かくオーソドックスな演出。アラーニャはオランジュはホームグラウンドという感じで、伸び伸び歌っています。
●ファウストとマルグリートの2重唱
●兵士の合唱 オランジュ名物 松明かかげた大合唱です。
●こちらから全曲 2008年 オランジュ音楽祭 指揮:ミッシェル・プラッソン
ロベルト・アラーニャ、インヴァ・ムラ、ルネ・パーペ、ジャン=フランソワ・ラポワント
(2)
続きまして、2004年ROH。 これが有名なマクヴィカーのプロダクションのプルミエです。
アラーニャ、ゲオルギュー、ターフェルの3主役に加え、脇役にもキーンリーサイドとソフィー・コッシュ、というとんでもなく豪華な顔ぶれで、またすっごい奇抜な天才的演出。
1幕の変身シーン、アラーニャの変身っぷりはかなりウケます。2幕、町のワルツがキャバレーの踊り子になってる!でもこれがすっごくいい!パリのモンマルトルの雰囲気満点!(本当の舞台はパリじゃないけど) マルガリーテはキャバレーの給仕さんになってます。
●3幕 この清らかな住まい
※清らかなこの住まいの歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●ワルプルギスの夜のバレエ
これはもう迷作・名作・珍作のどれでしょう? (私は名作と思います)
今までワルプルギスのバレエはこのオペラにそぐわない邪魔者としか思っていませんでした。緊迫した悲劇的進行の中で、暢気なバレエが入るのは興ざめ、と。(通常のこのバレエは、古今東西の美女が饗宴で次々踊るシーンです)
しかしこの演出、振付はどうでしょう!!私はエロ・グロ・奇抜すぎは好きではないのですが、これはそのすべてに該当するにも関わらず、すごい!初めてこのシーンに必然性を感じました。
お腹の大きな臨月の惨めなバレリーナが嘲笑われいじめられ、死んだヴァランタンも血まみれで登場し(バレリーナによってたかって殺されるキーンリーサイド!)、下卑な男女が踊り狂い、欲望の醜さ、己がしてきた悪行の数々をこれでもかと見せられるファウストの可哀想なこと!(頭を抱えて泣いてる)
メフィストの女装姿は意味不明だけど、それを見て膝から崩れ落ちるファウストが倒錯的でよろしいから許します。
ギョッとする奇抜さと緊迫感に満ちたこの迷作バレエは一見の価値ありです。
●こちらから全曲 2004年 ROH 指揮:パッパーノ
ロベルト・アラーニャ、アンジェラ・ゲオルギュー、ブリン・ターフェル、サイモン・キーンリーサイド、ソフィ・コッシュ
(3)
最後に最新映像は2011年パリ・バスティーユ アラーニャ、インヴァ・ムラ、ポール・ゲ(Paul Gay)
さすがパリ・バスティーユ!という超ヘンテコリンな演出ですが、すごくいい!!突っ込みどころ満載ながら細かいシーンに意外に説得力があり、面白く、官能的でイケてます。
メフィスト役のフランス人ポール・ゲがスマートで超ナイス。やっぱりこの作品はメフィストがカッコイイか否かで雲泥の差ですねえ。ファウストとメフィストの両方共がフランス人で美男だなんて夢のようです〜 アラーニャは中年になっても素敵ですね。インヴァ・ムラも可憐でいい演技。
変身前の爺さんが別俳優が口パクしてるのはイマイチですが、カプセルから金ピカのアラーニャが登場するのはポケモンみたいで面白い。博士の書いたRien「無」の文字がずっと通奏低音的になってるのや、町でミスコンやダンス競技会があってそれをメフィストが操ってたり、隣のオバサンを含めての4重唱が正しくブッフォになってるのも実によいです。愛の2重唱も最高に美しい!
前半は面白いけど、後半は痛切で胸がキリキリ痛みます!でも大変美しく、初めてこのオペラを見たときの感激を久しぶりに思い出して泣きました。あれ(1975年のお薦め動画)もパリの上演でしたが、このプロダクションもそれに匹敵する傑作ではないでしょうか。演出も、主役3人も、グッジョブ!
●全曲 2011年 パリ・オペラ座 指揮:アラン・アルティノグリュ
ロベルト・アラーニャ、インヴァ・ムラ、ポール・ゲ
●ダイジェスト版
●この清らかな住まい(ホームビデオですが、歌は素晴らしい!)
※清らかなこの住まいの歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●金の仔牛の歌 ポール・ゲ(Paul Gay) このメフィストフェレスは最高! 歴代のベスト・メフィストです。
※金の仔牛の歌の歌詞とカタカナ読み、訳、解説を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。