ハムレット(トマ) あらすじ STORY
あらすじ(ハムレット)
※原作はシェークスピアのハムレットですが、ここではトマのオペラのあらすじを記載しています。
(1幕)
悲劇的な序曲で始まった後、華やかなファンファーレと入場行進で幕が開きます。
宮廷の広間で、新王クローディアスが、「兄の妻であったそなたは、デンマークの民の期待に応えて我が妻となり、再び王妃となるのだ」と告げて、ガートルード(ハムレットの母)の頭上に王冠を載せます。人々は「先王が亡くなった悲しみは、この祝福で消えゆくでしょう」と歌い、新王の結婚を祝福します。
父を亡くしたばかりのハムレットは、たった2か月で母が他の男の妻になったことにショックを受け、「涙は数日で消えるとは、女はこんなに移り気で心弱いものか」と嘆きます。恋人オフィーリアが現れ、「どうして目をそらすのですか。私を忘れてしまったの」と問うと、「約束を1日で忘れるような、女心のような薄情さは持ち合わせていない」と答え、オフィーリアを傷つけます。
しかし彼をひたむきに愛する彼女を知っているハムレットは、「光を疑うがよい、太陽や天地をも疑うがよい、しかし私の愛は決して疑うな」と歌い、オフィーリアも「聖なる光よ、私たちの愛の証人になってください」と答えて、永遠の愛を誓う二重唱になります。
そこにオフェーリアの兄が現れ、任務でノルウェーへ発たなければならないので、自分に変わって妹を頼む、とハムレットに託します。
城では祝宴が始まり、酔っ払った者たちの陽気な歌が聞こえます。そこへハムレットの親友であるホレーショとマーセリュスが青ざめた顔で現れます。亡き王の亡霊を見たという二人は怯えながらハムレットに報せ、3人で亡霊を待ちます。
城内から祝宴の音楽が聞こえる中、真夜中の鐘が鳴り、亡霊が現れます。ハムレットたちは恐怖に慄きながら、「おお父よ、お答えください。なぜ冷たい土の中から起き上がられたのですか」と問うと、亡霊は他の二人は場を外すよう命じた後、「神聖な力がおまえに命じるために遣わした。復讐するのだ。あの男は私が寝ている時に毒を注いだ。ハムレットよ父の仇を討つのだ! しかし母の罰は神に委ねなさい」と告げます。
恐ろしい真実を知ったハムレットは、すべてを捨てて復讐を決意をします。
(2幕)
オフェーリアは、ハムレットが急に冷たくなったことに悩み、「私を見ると逃げてしまうし、すっかり変わってしまった・・もう私を愛していないのだわ」と嘆きます。
そこにハムレットの母ガートルードが現れ、泣いている理由を尋ねます。「彼は私を避けて、もう愛していないのです」と答えるオフェーリアに、「そんなことはありません。あの子の心を鎮めることができるのはあなただけよ、どうか助けてあげて、母からのお願いです」と訴えると、オフェーリアも頷きます。
オフェーリアが去ると新王が現れ、「ハムレットの様子がおかしい、真実を知っているのでは」と不安を口にすると、ガートルードは恐ろしい罪の意識に怯えます。新王が「死者は目を覚ましはしない」と宥めても恐怖はおさまりません。
ハムレットは新王に、あなたたちに芝居をご覧頂きたい、と申し出ます。ハムレットに譲歩の態度を示したい王は、望み通りにするがよいと許可し、役者を招いて広間で黙劇が上演されることになります。
ハムレットは酒の勢いにまかせ、「甘美な酒よ、私の悲しみを忘れさせてくれ! 酔いよ、人生の暗い絶望を忘れさせてくれ!」と歌い、いよいよ黙劇が開演します。
始まったのは、王の暗殺劇。現実の出来事とそっくりの話に、王も王妃は青ざめ、他の人々は驚きます。
劇中の暗殺者が王冠を自らの頭上に載せたところで、ハムレットが王に「どうしました?青ざめていますよ」と尋ねると、王は「耐え難い侮辱だ!」と激怒し、場が凍りつきます。しかしハムレットは酒の歌を歌って高笑いし、人々は「ああ、彼は狂っている!身も凍る恐ろしい日だ!」と喧騒のうちに幕を閉じます。
(3幕)
ハムレットは自問します。「彼を殺すこともできたのに、私はどうしてぐずぐずしているのだろう・・・生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ・・」
そこへ新王が現れます。ハムレットには気づかずに後悔した様子で「神よ、どうか兄の怒りを鎮めてください」と祈る姿を見て、殺そうとしたハムレットは「『その時』は、祈っている時ではなく玉座にある時だ」と思いなおします。
そこへオフェーリアの父が現れ、我々に不利なことは言わないように、と言うのを聞いて、ハムレットは愕然とします。愛するオフェーリアの父が共犯であったことを知り、忌わしい真実に怒りに震えます。
そこに母とオフェーリアが現れます。彼女との婚礼を薦める母に、先ほどのショックに動揺しているハムレットは、オフェーリアに「尼寺へ行け!」と冷酷に言い捨てます。驚くオフェーリアは、誓い合った愛だけが全てだったのに、と悲しみに崩れます。
母は、忠告に従うようハムレットに懇願しますが、ハムレットは母の不貞と殺人の罪を糾弾します。うろたえた母は、「哀れな母を許して、苦しみに泣き伏し、息子に膝まづいて赦しを請うているのです」と訴えますが「人殺し!」と罵倒します。しかしそこに、彼を呼ぶ父の声がし、「罪を忘れるな、しかし母は赦してやれ」と命じます。
亡霊の姿は母には見えず、怯えて「ハムレット、本当に狂ってしまったの?」と問いますが、「私は正気です。父の声を聞き、怒りも鎮まりました」と答えます。
(4幕) オフィーリア狂乱の場
夜が白々と明けかけた頃、オフィーリアが小川の流れる野にさまよい出てきます。
「お城を出てきたのよ。、私もまぜてちょうだい、私はハムレットの妻のオフィーリアよ。私たちの心は強く結ばれているの。彼が私から逃げたなんて誰かが言っても信じちゃだめよ、ハムレットは私の夫・・・ あの人が誓いを破ったりしたら、私はおかしくなってしまうわ。皆さんにお花をあげましょう。さあ、どうぞ。」(花を配る)
「私の歌を聞いてね」と言って、オフェーリアは歌い続けます。
金髪のヴィリスは湖の底に眠る・・・夫の腕に抱かれた幸福な妻が羨ましい・・・・ラララ・・・
水の精はあなたを湖の底にひきずりこむ・・・さようなら、空よ、愛する人よ、永遠に・・・・ラララ・・・
なんて酷い、ああ愛しています、私はあなたのために死にましょう・・・
(ハープと合唱が天上の音楽を奏でる)
「彼があそこに! こんなに待たせて・・・ああ純白のヴィリスよ。」
・・・『光を疑うがよい、太陽や天地をも疑うがよい、しかし私の愛は決して疑うな』・・・
オフィーリアはふらふらと小川に入って行き、そのまま姿が消えます。
(注:ヴィリスとは、欧州の伝説に登場する結婚前に亡くなった花嫁の精霊)
(5幕)
二人の墓掘り人夫が、歌いながら墓を掘っています。
「貴婦人も王子も、老人も若者も、ブロンドもブルネットも、誰もが墓にやってくる。昼の次にゃ夜が来るのが定めってもの。愛も金も名誉も、全ては虚しい。でも酒だけは別さ!」
誰の墓かと尋ねるハムレットに、「名前をきいたが忘れたよ」と答えます。
しばらく放浪していたハムレットは、オフィーリアだけには可哀想なことをした・・と後悔しているところへ、オフィーリアの兄が現れます。
「裏切り者!妹を守ると誓ったのに、何をしたのだ!」と激怒する兄は剣を抜き、二人は決闘になってしまいます。
ハムレットの剣が彼を突いた時、葬送の歌が聞こえ「誰の葬列だ?」と問うハムレットに、「知らないのか!?」と驚きます。
「まだ咲かぬ蕾が嵐に散るように、彼女は死んでしまった、若く美しいまま・・・」という葬列の歌に、初めてオフィーリアの死を知ったハムレットは驚きます。
「何という罪だ!おまえを失ってしまって、ああ、私も死のう!」と嘆くハムレットの前に、再び亡き父の亡霊が現れます。
「息子よ、務めを果たすのだ! ハムレット、誓いを守るのだ!」と迫る声に、決意したハムレットは、葬列に参列していた義父をめがけ剣を突き刺します。
復讐を果たしたハムレットに、亡霊は「おまえが王になれ」と告げ、ハムレット「私の魂は墓の中・・・そして私は王だ」とつぶやき、群衆が「我らが新王、万歳! ハムレット万歳!」と讃える中、茫然と立ち尽くします。
(※ハムレットが死ぬ版では、「オフィーリア、私も君と共に死ぬ」とつぶやいて絶命し幕が降ります)