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作曲者別

ホフマン物語(オッフェンバック)
    Les contes d'Hoffmann (Offenbach)



作品紹介(ホフマン物語)

オッフェンバックの「ホフマン物語」は、まったく ”面白すぎる!” オペラです。
音楽もストーリーも豪華絢爛、荒唐無稽。こんなに面白いオペラは他にないのでは?

詩人ホフマンが恋した3人の個性的なヒロイン(機械人形、歌姫、娼婦)と、運命の糸をひく3人の悪魔、そして彼を見守るミューズが織りなす幻想的なストーリーに加え、音楽も最高に充実していて、エンターテイメントと芸術性を見事に兼ね備えた、ワクワク感満点の傑作です。

3つの恋はすべて破れ、観衆に、悪魔に、あるいは恋人本人に嘲笑されて哀れに終わるのですが、そんな愚かなホフマンは最高に愛すべき私たちの分身です。絶望に泣き崩れ、嘲笑されるホフマンを見ながら、じんわり温かな気持ちにさせられる、独特の世界があります。

(「ホフマン」とはドイツの実在の作家・作曲家・画家のE・T・A・ホフマンのことで、彼の短編小説から3編を題材にとって、奇才芸術家ホフマン自身のストーリーに仕上げています。)

有名な人形の歌(シャンソン・ド・オランピア)やホフマンの舟歌(バルカロール)をはじめ、オッフェンバックの天才が結晶したような素晴らしい曲がめじろ押しで、楽しみどころが山盛り!

オペレッタ作家として人気を博し、その湧き出る素晴らしい音楽で「シャンゼリゼのモーツァルト」と讃えられていたオッフェンバックは、最後の作品としてこのオペラの作曲に心血を注ぎ、命をすり減らし、初演を見ることを切望しながら未完のまま死んでしまいました。ピアノ譜や全体のスケッチはできていたものの、散逸したものも多く、そのため様々な版が存在します。

20世紀に主に上演されていた版(シューダンス版)は、ストーリーが省略されていたり補作者が作った曲が入っていたりしたのですが、近年自筆稿が次々と発見され、それを元にできるだけオッフェンバックの意図に沿った新版が作られて上演されています。(1977年のエーザー版に始まり、ケイ版、ケック版を経て、2005年のケイとケック版まで) 詳しくは→ 版の経緯(年譜)

旧版でも十分素晴らしいけれど、オッフェンバックの原曲に忠実な新版はさらに深みがあって感動的。 プロローグのミューズの歌や、目玉の3重唱、ジュリエッタや二クラウスのアリア、最後の合唱などの名曲が復活し、以前はやや意味不明気味だったストーリーも、芸術神ミューズに愛される詩人の話として完結しています。

荒唐無稽にみえる恋話も、全ての人間の愛と欲望のメタファーとして見事な造型になっていて、時空を超えた普遍性を持ったストーリー。けっして怪奇物や恋愛オムニバスなどではありません。
元々オペレッタでは笑いと軽妙さが真髄だったオッフェンバックらしく、登場人物はみな愛すべきキャラクターであり(悪魔も愛嬌があって憎めない!)、全編は優しい温もりに溢れています。このサイトではオッフェンバックのオペレッタも数多く紹介していますので、是非そちらもご覧いただければ彼の楽しく温かい魅力をよりご理解頂けると思います。

なお、通常、4人の悪魔(悪魔3人+リンドルフ)は同一のバスが歌いますが、3人のヒロイン(+ステラ)は同一のソプラノが歌うこともあれば、3人の別のソプラノが歌うこともあります。一人の歌姫の七変化を聴くのも楽しいし、個性の違う3人の歌手の競演を聴くのも楽しく、どっちにしても楽しめます!



お薦め動画

→ お薦め動画 (旧版:シューダンス版:1981年ROH)

→ お薦め動画 (新版:エーザー版、ケイ版、ケイとケック版など)

→ ホフマン物語 版の経緯(年譜)



あらすじ(ホフマン物語)

※幕の順番は、新版は「オランピア → アントニア → ジュリエッタ」 となっていますが、私は旧来の順番 (お人形 → 娼婦 → 可憐な娘) に慣れ親しんでいるため、その順で記しています。「オッフェンバックが生きていたら、最終的にその順番にしたのでは(音楽的にも劇的にも充実したアントニアの幕をラストに)」というミッシェル・プラッソン氏(フランスの指揮者)の意見に私も賛同します。


(プロローグ)
ルーテルおやじの酒場の開店前、ワインやビールの酒の精たちが「私たちゃ人間の良き友さ」と歌い陽気に騒いでいます。そこに酒樽からミューズ(芸術神)が登場し、愛する詩人ホフマンを恋の情熱から芸術の世界に引き戻すために「気ちがいじみているけれど、天の持ち場を離れるわ」と歌い、ホフマンの親友二クラウスに変身します。

やがて酒場が賑わってきた頃、「ボンジュール諸君!」とホフマンが登場。
付き従って来た二クラウスは、レポレロ(ドン・ジョヴァンニの従者)の愚痴の唄を歌って笑わせます。

ホフマンは、恋人のステラ(隣の劇場で上演中のドン・ジョヴァンニのプリマドンナ)が舞台がはねた後に来るのを待っているのですが、彼女からの手紙(私室の鍵つき)を恋敵のリンドルフがこっそり奪ってしまったことも知らず、すっかり酔っ払ってしまいます。道化者クラインザックの歌を歌っても、熱唱するうちになぜか恋の歌に脱線。冷笑するリンドルフと舌戦(ダジャレの応酬)を繰り広げた後、他の客たちの求めに応じて、今までの失恋話を語り始めます。

3つの失恋話、それは、まるでタイプの違う3人のヒロインとの、奇想天外な恋物語です。



(1幕)
最初のヒロインはオランピア。機械仕掛けの人形(サイボーグ)なのです。

芸術家であり詩人のホフマンは、さらに最近流行りの「科学技術」を学ぶべく、スパランツァーニ博士に弟子入りをします。
その日は博士の娘オランピアのお披露目パーティ。オランピアこそ、スパランツァーニ博士が開発し、人形師コッペリウス(悪魔その1)が外側を作った機械人形です。
しかしそうとは知らないホフマンは、間抜けなことに人形と気付かずに一目惚れしてしまいます。(コッペリウスから買った魔法のメガネのせいでもあるのですが)

招待客たちが「さあさ、博士、早くお嬢さんを紹介してくださいな」と待ち構える中、美しいオランピアが優雅に歩いて登場。
「いいかい娘よ、落ち着いて歌うのだよ」と心配そうに言う博士に「ウイ!ウイ!」と甲高い声で答えたオランピアは、有名な「シャンソン・ド・オランピア」(人形の歌)を歌い始めます。この歌は技巧派ソプラノ(コロラトゥーラソプラノ)の真髄が発揮される名曲中の名曲で、カクカク動いたり、途中でゼンマイがきれて止まっちゃたりしながら歌う超絶技巧の歌は、もう抱腹絶倒の面白さ!(聴かせどころの高音のカデンツァは、歌手が自由にメロディーを変えて歌うので、それも楽しみ)

パーティの客たちが「すご〜い! かわい〜い!」と大喜びする中、一人だけ人間と思いこんでうっとり聴き惚れているホフマンの愚かさ・・・。
(でもこれは、現代の、アイドルやアニメキャラに萌えてる男子たちの姿そのもの、ではないですか!)

やがて、オランピアにダンスを申し込んだホフマンは、機械の猛スピードに振り回され、目が回り、加速したお人形ちゃんは、最後には博士から渡された報酬が不渡り手形だと知って怒ったコッペリウスにぶっ壊されて(!)しまいます。(たいてい手足がバッラバラとか、バネがビヨ〜ンとかになります)
「人形だったのか!!!」と絶望するホフマン、大笑いする客たち・・・・

(2幕)
有名な「ホフマンの舟歌」で幕が開きます。歌っているのは、2幕のヒロイン、ジュリエッタとホフマンに影のように従う親友の二クラウス(男性だがメゾソプラノ担当、美神ミューズが変身した姿)

ジュリエッタは絶世の美女の高級娼婦で、とんでもない悪女。
そんな悪女とミューズが、どうしてこんなに仲良く美しく、共に歌うのか?
まったくそこがオペラのいいところ、こんなに官能的な美しい舟歌がありましょうか!

場所はヴェニス。夜の歓楽街でホフマンは「優しい愛なんて嘘っぱちだ!恋なんて一日限りで十分!」と歌っては酒を浴び、ギャンブルに興じています。ジュリエッタは、男たちから影(鏡像:鏡に映る姿)を奪ってダペルトゥット(悪魔その2)に売ることで、宝石を手に入れていました。彼女に恋し、影を失ってしまった数々の男たち。
ダペルトゥットは次なる獲物ホフマンの影と引替えに、見事なダイヤモンドをジュリエッタに約束します。

ホフマンは二クラウスの警告に「娼婦と恋に落ちるなんて、あるわけないだろ」と笑っていたのですが、ジュリエッタの手練手管に脆くも陥落し、甘い愛を語ります。「ここに居ては危ないから逃げて。でも私のために置いていってほしいものがあるの」と、彼の影が欲しいとねだるジュリエッタを陶然と許してしまいます。鏡の中から己の姿が消えてゆくのを見て愕然とするホフマン。
(娼婦にぞっこん入れ込む男・・・、というのも、現代のキャバクラ通いの男子とそっくり、じゃあ〜りませんか?)

「ホフマンの舟歌」のバリエーションのメロディーでの、敵味方全員による絶望と悲しみと嘲りのコンチェルタート(合唱つき6重唱)が、見事なクライマックス!

ホフマンは、ジュリエッタの私室の鍵を争って恋敵シュレミールと決闘しますが、手を血に染めてまで鍵を手に入れ、彼女の部屋に行くと、ジュリエッタは従者と共にゴンドラに乗って、嘲笑いながら去っていきます・・

※新版ではストーリーが追加になっていて、シュレミール殺しで警察に追い詰められたホフマンが、ジュリエッタに騙されたことを知って激昂し彼女を刺そうとしますが、ジュリエッタを庇ったせむしの従者ピティキナッチ ョ を誤って刺してしまいます。 茫然とするホフマン、ピティキナッチョに身を投げて悲嘆するジュリエッタ、嘲笑するヤジ馬たちで幕。

(3幕)
最後のヒロインはアントニア。今度こそ人形でも娼婦でもない、血の通った可憐な娘です。
音楽家の両親を持ち、類まれな歌の才能がありますが、胸を病んで歌うことを禁止されていました。恋人のホフマンに会うことも父に禁じられていたのですが、彼女に会いたい一心のホフマンが密かに訪れ、久々の再会に喜んだ二人は共に愛を歌います。
しかし、病状が悪いアントニアは息が切れ、戻ってきた父に叱られます。

病気を治すために・・とわかっていても、歌を諦めきれないアントニア。
そこに医師の姿をしたミラクル博士(悪魔その3)が現れ、アントニアの未練に火をつけます。

「おまえは、舞台での満場の客からの賞賛と、熱狂的な喝采を忘れられるのか!?
その若さと美貌と才能を、みすみす捨てるのか!?
ホフマンだってただの男、おまえの美しさになぞじきに飽きる。
そんな奴と結婚して家庭に入ってみろ、子供の世話で色香も褪せるぞ!」

まさに悪魔のささやき。
「いいえ私は愛を貫くわ!・・でも、ああこの誘惑をどうしたら断てるのでしょう、助けて・・・お母様!」
と亡き母に呼びかけるアントニアに、悪魔は幻想を見せます。

「・・・アントニア・・・」と聴こえてくるのは、亡くなった母の歌声!
「お母様!!」と驚くアントニア。
「可愛い娘よ、私の声が聞こえる? さあ歌いなさい、昔のように!」
という母の声にアントニアは目も眩み、衰えた体力も忘れて全身で歌い始めます。

「歌え!もっと歌え!」と嘲笑する悪魔との3人のアンサンブルの見事さ!
取り付かれたように歌い続けるアントニアは、最後には絶唱し、倒れ、こと切れます。
駆けつけて「医者を!医者を!」と叫ぶホフマンに、現れた医者(ミラクル博士)は、「モルテ(ご臨終です)」と一言。ホフマンの絶叫。

(ついでにこれも現代に置き換えますと・・・結婚だけではイヤ、自分の夢が諦めきれないわ!、という女性に振られてしまう男。そう、サエコちゃんとダルビッシュみたいですね〜!)

(エピローグ)
長い話の末に、ホフマンは酒場で酔いつぶれてしまっています。オペラが終演し、やっと来た恋人のステラにむかって、「あなたは、オランピア!?・・ いや、彼女は壊れた・・ ジュリエッタか?・・ 地獄に落ちたはずだ・・・ アントニア!?・・・ 死んだっ!!」
そんなホフマンにステラは「永遠にさようなら!」と別れの言葉を告げると、リンドルフ(3人の悪魔と同じ歌手が演じる)と出て行ってしまいます。
(※最新版:ケイとケック版では、ここでホフマンとステラの2重唱が入ります)

酔いつぶれ眠ってしまったホフマンに、二クラウスの姿から戻った美神ミューズが語りかけます。
「哀れなホフマン、もう狂おしい恋の夢は忘れなさい。あなたの涙を拭う友がここにいるわ。愛しているわホフマン、私を信じて!あなたは真の詩人に生まれ変わるのです!」
そして、登場人物全員(悪魔やヒロイン、ホフマンも含めて)による感動的な合唱 「人は愛によって大きくなり、涙によっていっそう成長する」で幕を閉じます。


※旧版(シューダンス版)ではステラは一言も発しなかったので、女優やモデルが演じてたのですが、新版では最後にステラの歌があるため、誰が演じるかが問題になります。3人とは別の歌手が演じる場合もあれば、3人の中で一番それっぽい人が歌う場合もあれば、3人が代わりばんこに歌う、なんて演出もあります。



※「ホフマンの舟歌」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。




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