フランス語のイタリアオペラ


「フランス語のオペラ」には、フランス人が作ったオペラの他に、イタリアの作曲家がフランス語の台本で作ったオペラというのが結構あります。
「なんでフランス語・・?」と疑問に思う方のために、簡単にご紹介しようと思います。

19世紀当時、パリは世界の芸術文化の中心でしたので(今でもそうですが・・)、作曲家にとってパリで認められることは重要でした。
そのため、イタリアで活躍した後にパリに移住して作曲したり、パリの劇場の委託で作曲したオペラが多数あり、多くはフランス人好みの華麗でロマンティックな作風で作られています。

またそれらの作品は、イタリア語版も存在することが殆どで、仏語版・伊語版が並存します。その形態には、大きく分けて次の3つがあります。

(1)もともとフランス語で作られて、今も主にフランス語で上演される作品…「連隊の娘」(ドニゼッティ)など
(2)もともとフランス語で作られたが、その後イタリア語版での上演が主になっている作品…「ドン・カルロ」(ヴェルディ)など
(3)もともとイタリア語で作られたが、フランス語の別バージョンもある作品…「ランメルモールのルチア」(ドニゼッティ)など


しかし・・・聴いてみて思うことは、仏語の伊オペラをフランス人でない方々が歌うと、はっきり言って、何言ってるのかサッパリ分からない! そもそもフランス語か否かも、しばらく聴いてみないとわからない・・・ こういうのを初めて聴いた人は「フランス語のオペラは苦手だ」と思うんだろうなあ〜、とちょっと納得してしまいました。
もともとフランス人に聴かせるために仏語で作られたわけですから、外国人が外国の歌劇場で上演した場合、「フランス語である意義」があまり感じられないかも・・・

その点ではやはり、仏語ネイティヴの歌手(ナタリー・デセイ、ロベルト・アラーニャ等)の言葉の明瞭さと美しさは圧倒的です。それらの録音では、フランス語版の価値を感じて頂けると思います。



ヴェルディ  「シチリア島の夕べの祈り」 Les vêpres siciliennes

1854年 第1回パリ万国博覧会のために、パリ・オペラ座からの依頼により作曲されました。
フランスのグランド・オペラの形式で作られ、バレエが付加されています。 後にイタリア語版も作られましたが、主にフランス語で上演されます。

●2013年 ROH 指揮:パッパーノ   ブライアン・イーメル、アーウィン・シュロット




ヴェルディ 「ドン・カルロス」 Don Carlos

パリ・オペラ座の依頼により作曲され、1867年にオペラ座で初演。
オリジナルはフランス語版ですが、同年にイタリア語版「ドン・カルロ」が作られ(言葉だけでなく音楽も若干異なる)、現在はイタリア語版の上演の方が多い。

●別ページに詳細を掲載していますので、こちらをご覧ください → ドン・カルロス



ドニゼッティ 「連隊の娘」 La fille du régiment

1840年、パリのオペラ・コミック座の依頼により作曲されました。
後年イタリア語版も作られましたが、現在はフランス語版の上演が主流です。特にフランス人ソプラノ、ナタリー・デッセイの当たり役となり、軽やかなフランス語の魅力が広まりました。

●2008年 メト  ナタリー・デセイ、ファン・ディエゴ・フローレス
ナタリーのマンガチックな演技が大人気となった、有名なロラン・ペリーの演出です。デセイ&フローレスの黄金コンビ。


●オペラコミック形式のこの作品はフランス語のセリフがたくさんあり、このデセイのコミカルなセリフも魅力のひとつです。



●全曲 2007年ウィーン国立歌劇場



ドニゼッティ 「ランメルモールのルチア(リュシー)」 Lucie de Lammermoor

もともとはイタリア語で1835年に作曲されたオペラ。
イタリア当局の検閲を避けてパリに移住したドニゼッティが、パリで上演するために、1839年フランス語に改作しました。言葉だけでなく、登場人物やストーリーも大幅に変更されています。
現在はイタリア語版上演が主流ですが、仏語版も別バージョンとして評価が高い。

●フランス語版  2002年 リヨンオペラ座   チョーフィ、アラーニャ、テジエ
リュシー(ルチア)役チョーフィの鬼気迫る演技が凄い!一幕から既に狂乱の場かと思う迫力だったけど、本番になったらまさに彼女の一人舞台に目が釘付け! アンリ(エンリーコ)役テジエのクールな白目も怖くて素敵、エドガール(エドガルド)役アラーニャは1幕でハイEs(ミ♭)を出してます。



●2重唱  ナタリー・デッセイ & ロベルト・アラーニャ
上記と同じメンバーでのリヨンの録音ですが、CDはリュシーがデセイです。




ドニゼッティには、他にも下記のフランス語によるオペラがあります。

●ラ・ファヴォリート
●リタ
●ドン・セバスティアン




ロッシーニ  「オリ―伯爵」 Le Comte Ory

イタリアからフランスに移住したロッシーニが、1828年にパリ・オペラ座で初演したオペラ。フランス国王の戴冠式のために書かれた「ランスへの旅」から、多くの曲が転用されています。

●全曲  1999年 グラインドボーン音楽祭




ロッシーニ  「ウイリアム・テル」(仏語読みはギヨーム・テル)

1829年 パリ・オペラ座で初演。 序曲が有名ですが、全体にフランス的な大変美しいグランドオペラです。

●別ページに詳細を掲載していますので、こちらをご覧ください → ギヨーム・テル




ワーグナーにもフランス語版が・・

これはイタリア語でなくドイツ語との並存ですが、ワーグナーの作品にもフランス語版があります。

1861年ナポレオン3世の依頼でタンホイザーがパリで上演され、その際にフランス語版(パリ版)が作られました。フランス語に訳されただけではなく、グランドオペラの流儀に則りバレエを付加されていますが、上演自体は批判を浴びて失敗だったそうです。
録音はいくつかあり、近年では2017年にホセ・クーラが上演しています。




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