マリウスとファニー(コスマ)
Marius et Fanny ( Vladimir Cosma )
作品紹介(マリウスとファニー)
ウラジミール・コスマというのは1940年生まれの現代の作曲家で、主にフランスの映画音楽の作曲で知られています。映画、TV合わせて200以上の作品を作ってるそうですが、そのコスマが作った本格的な「オペラ」、2007年世界初演です。
いかにもフランス的な切なく甘美な音楽は、粋で、ノスタルジックで、確かに映画音楽チックな旋律ではあるけれど、古き良き時代のフランス映画のような懐かしさがグッときます。マリウスやファニーの歌だけでなく、セザールやパニスの歌も、アンサンブルも、町の人たちの合唱も、本当に良くできている!
原作はマルセル・パニョルの名作戯曲”マルセイユ3部作”で、「マリウス」「ファニー」「セザール」のうち、最初の2つを元にしています。このマルセイユ3部作は1960年代に映画化され、美しい港町マルセイユの風景と情緒溢れる映像で、フランスでは今でもしょっちゅうTV放映される人気映画なのだそうです。
だから、日本人はあまり知らなくても、フランス人にとったら常識!というストーリーなのかも。
2007年 マルセイユ歌劇場、ロベルト・アラーニャとアンジェラ・ゲオルギュー夫妻で初演。
この後に、何回か別の歌手でも上演されています。
マルセイユの名作をマルセイユ歌劇場で、そして作曲者コスマはルーマニア出身でパリに移住しているそうで、ルーマニア人でパリに嫁いだゲオルギューと同じです。アラーニャもマリウスのキャラにぴったりだし、この劇場で彼らが演るべくして演った作品です。(ちょっと年くってるけど、十分青春の切なさが出ています)
マルセイユ歌劇場も、フランスならではの作品を多く取り上げてくれる貴重なオペラハウスです。
あらすじ(マリウスとファニー)
舞台はマルセイユ。港近くで酒場を営むセザールの一人息子マリウスは、海に憧れ船乗りとして出港する日を夢見ています。幼馴染のファニーとやっと愛を確かめ合ったに直後に出港のチャンスが巡ってきたマリウスは、未知の世界へ喜び勇んで旅だっていきます。ファニーは彼の子を身ごもっていたのですが、彼の夢を奪ってしまうことができず、そのことを告げずに見送ります。しかし、いつ帰るともわからぬ男を待つこともできず、生まれてくる子供のために初老のパニスの求愛を受け入れて結婚します。子供が1歳になる頃旅の途中で一時戻ってきたマリウスは、真実を知って驚きファニーに愛を訴えますが、彼女はマリウスをずっと愛しつつも、子供と優しいパニスを想って拒絶。マリウスはまた海へ帰ってゆく・・・
お薦め動画
●全曲
●Loin vers un autre destin 「はるか遠く、もうひとつの運命へ」 ※下に歌詞を載せています。
マリウスが船出の決意を語るシーン。このマリウスのアリアは何度聴いても泣けます。若い頃のアラーニャにダブるんですよね〜。酒場で歌ってた彼がオペラ歌手を目指した頃の。(その頃は知らないけど、こんな感じだったんだろうなーって)
●Il faut choisir sa vie 「彼の人生を選択しなければならない」
●Est-ce le monde qui s'écroule マリウスが出航した後、病院で懐妊を告げられたファニーの悲しみの歌
●ラストシーン Non jamais, jamais je ne t'ai trahi 「けしてあなたを裏切っていない」
終わり方が切なくて、ちょっと悲しいですね・・・3部作最後の「セザール」では、月日がたってパニスが亡くなった後、二人が結ばれるそうなので、それを妄想して慰めましょう。
●Loin vers un autre destin はるか遠く、もうひとつの運命へ
Loin vers un autre destin je partirai
un grand voilier m'attend et mon coeur est pret.
Le soir,je l'entends qui m'appelle
et je m'en vais sur la jetee voir la mer.
はるか遠く、もうひとつの運命へ、僕は旅立とう
大型船が僕を待っている 心は準備ができているさ
夜には、僕を呼ぶ声が聞こえ
そして海を見に桟橋に行くのだ
Loin des parfums des Antilles.
Loin des saveurs de vanille.
Je vais partir aux iles Sous le Vent,du reve plein les voiles,
comme un chercheur d'etoiles,le coeur perdu battant
dans les soleils d'ailleurs.
遠いカリブの香り、遠いバニラの香り
夢に満ちて 島々に旅立つ 星を追い求めるように
他の地の太陽の中で心臓の鼓動は止まる
Chaque nuit,brise,je cours au bout du quai,
comme un goeland qui attend le vent.
夜ごと風は吹き
僕は風を待つカモメのように堤防の端から飛び立つ
C'est donc ca, ton grand secret?
C'est une fievre.
C'est une vraie folie!
Qui me brule la vie.
Donne-moi tes mains.
Je suis si loin.
Mais tellement loin deja.
Qui je n'existe plus.
Qui je n'y peux plus rien.
Penses-tu a nous?
Je pense que je suis fou.
de larguer les amarres.
Fou comme un homme qui part,quitte a souffrir,
d'avoir laisse un jour l'aomour au bout du quai,
peut-etre pour toujours,le coeur perdu battant d'avoir rate ma vie,
Mais c'est ma vie.
Et me voila parmi les marins du port,
je deviens celui qui a perdu le nord,
Mais,toujours en moi,cet appel si fort qu'il m'attire encore.
Et je cours comme un fou vers mon autre destin,
mon autre ailleurs.
Si j'ai le coeur tou de partir au loin.