ミニョン(トマ)  Mignon(Thomas)



作品紹介(ミニョン)

YouTubeで「トマ ミニョン」で検索すると、ゾロゾロ出てくるのは、お子様のヴァイオリン演奏の動画の山。

そう、「ミニョンのガヴォット」といえば、日本が世界に誇るヴァイオリン教育法「スズキメソード」の教則本第2巻にある練習曲として有名なのであります。(それまでの初心者用の曲から、スピッカートやトリルを多用したお洒落な曲が初めて弾ける!という嬉しさを感じる曲です)

でも、元の曲がフランスオペラとは、殆どの方が知らないと思います・・・しかもこのガヴォット、貴族のボンボンのフレデリックが女優の私室に忍び込んで、「私ですよ」と歌う歌なんですから!(男性なので通常はテノールが歌いますが、アルトが演じる場合もあります。単独のアリアとしてコンサート等で歌うのは女声が多いようです)
このガヴォットは2幕の前の間奏曲にも一部使われており、それを元にオーケストラ曲にしたものがスズキメソードの曲とほぼ同じです。(下にYouTubeを載せています)

オペラの原作はゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」で、グノーが同じゲーテの戯曲を元に作ったファウストと同時期の同系統の作品です。
上演機会は少ないのですが、フランス的な美しいメロディーに溢れた叙情的なグランドオペラ風の作品で、登場人物それぞれに美しいアリアがたくさんあり、デュエットや合唱もどれもとても素晴らしい、「古き良きフランスオペラ」の典型のような傑作で、もっと上演されればいいのに、と思います。

原作の結末は悲劇なのですが、トマお得意の改作により最後にはミニョンがヴィルヘルムと結ばれ、優しい吟遊詩人ロターリオも実の父とわかって盛大なハッピーエンドで終わります。(しかし、ハムレットと同様、近年は原作に基づいて最後にミニョンが死ぬ悲劇版の上演が主なようです)

曲中で有名なのは、ヒロインのミニョンが故国を想って歌う「君よ知るや南の国」と、恋敵フィリーヌが歌うコロラトゥーラの華やかなアリア「私はティタニア」(女優のフィリーヌが劇中劇「真夏の夜の夢」の妖精ティタニア役で歌う歌です)、それからヴィルヘルムのロマンス 「うぶな彼女は信じなかった」 「さよならミニョン」等も単独でコンサートなどでよく歌われます。 また、序曲だけが単独でコンサートで演奏されることもあります。

ちなみに、「君よ知るや南の国」という古風な訳は、明治時代にゲーテの詩を堀内啓三氏が訳したものだそうで、他にも森鴎外など多くの文人が訳し、日本人に親しまれた詩なのだそうです。(下の動画に、日本語字幕が出ます)
望郷の歌だけあって、とてもノスタルジックなメロディーで、日本人が初めて聴いても懐かしさを覚えるのだから音楽って不思議ですね。

ミニョンはさらわれて旅芸人一座に売られた可哀想な少女で、少女なのにメゾ・ソプラノの役で哀愁を帯びた歌が多く、これと好対照にフィリーヌには華やかなソプラノのコロラトゥーラの歌がたくさんあり、見せ場も豊富です。

なお、ミニョン(Mignon)という主人公の愛称は、フランス語で「可愛い」という意味ですが、フランス語の形容詞は性によって形が変わり、女性の場合はmignonne(ミニョンヌ)、男性の場合がmignon(ミニョン)になります。「男の子でも女の子でもないよ!ミニョンさ!」とからかわれるのは、そういう意味なのです。


→ ミニョン(トマ)の詳しいあらすじはこちらから


お薦め動画(ミニョン)

●ミニョンのガヴォット(歌版) ”Me voici dans son boudoir”  フレデリカ・フォン・シュターデ

※ガヴォットの歌詞と訳を マイナーアリアの対訳集 のページに載せています。



●ガヴォットのオーケストラ版。スズキメソードの曲と殆ど同じです。



●君よ知るや南の国  ”Connais-tu le pays?” テレサ・ベルガンサ
(日本語字幕付き)

※「君よ知るや南の国」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。



●私はティタニア  Je suis Titania ナタリー・デッセイ



●このミニョンは日本語字幕つきの全曲DVDが発売されており、フランスのコンピエーニュ帝国劇場での名演を見ることができます(1996年 指揮:ジャン・フルネ)
ローカルな公演ですが、全員フランス語が明瞭で美しく、歌も演技も上等で素晴らしい、とても貴重な全曲映像です。
フィリーヌ役のフランスの名コロラトゥーラ、アニック・マシスがとても素晴らしい! 澄んだ瑞々しい美声といいスラリとした美貌といい、前半は彼女が主役かと思うほど(もともとフィリーヌは出番が多いのです)。 でも他の歌手も皆、実に好演で、「これぞフランスオペラ!」というような上演です。私はこれを見てこの作品がますます大好きになりました。(ラストは悲劇版です)

・「君よ知るや南の国」 木管楽器とメゾの音色がなんとノスタルジックなことよ。


・「私は金髪のティタニア」  アニック・マシスの素ン晴らしいフィリーヌ!



●Elle ne croyait pas dans sa candeur naive ”うぶな彼女は信じなかった”
ロベルト・アラーニャ  仏語歌詞が出ます。(このクリアな美しいフランス語!)



●Adieu Mignon さよならミニョン アラーニャのフランス語は本当にいいですね。。言葉がそのまま音楽になっている!
「さよならミニョン、元気出して、泣くんじゃないよ・・・」って。




●2012年 グラン・テアトル・ジュネーブ 抜粋
ソフィー・コッシュ(ミニョン)、ディアナ・ダムラウ(フィリーヌ)、パオロ・ファナーレ(ヴィルヘルム)




●「私はティタニア」 2012年 ディアナ・ダムラウ 当代随一のコロラトゥーラの彼女、リキ入ってますがちょっと重たい。
しかし・・・最近の上演なのに衣装が何とも古臭いですな。もっと今風の演出で見てみたい曲です。



●序曲のみの演奏   指揮:小澤征爾  ボストン交響楽団
主要なアリアのメロディーが登場します。(君よ知るや南の国と、私はティタニア)







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