真珠採り お薦め動画(2)
2016年 メトロポリタン歌劇場
この滅多に上演されない隠れた名作「真珠採り」が、2016年メトロポリタン歌劇場で一世紀ぶりに上演され、ライブHDで世界中に配信されました。
それはとても喜ばしくありがたいことだけど、でもこの作品の真価を発揮してその魅力を世界中に知らしめてくれたかと言うと、ちょっと疑問・・・。特別にビゼーを、この真珠採りを愛する私としては、すみませんがちょっとダメ出しです。(以下ネタバレですので、ライブビューイング観覧予定の方はご注意ください)
まず指揮のノセダ、私は彼のかなりファンで、イタリア物やロシア物は生きがよくていいなあ!と思ってたんだけど、今回はフランスの香気のカケラもなく、テンポが全体に遅すぎて躍動感に欠け、適任とは言えませんでしたねえ。
主役の3人はみな名歌手ですが、フランス語ネイティブが誰もいない。唯一、四番手の長老役ニコラ・テステがフランス人だけど、彼はダムラウの夫ワクでの出場。でも私としては彼が一番かっこよかったなあ。(←フランス人贔屓) テステがズルガ役でもよかったのに、メトのHDの主役級はビッグネームでないとだめなんですね。。
ナディール役のポレンザーニはとても素晴らしかったです。あれだけ軽いリリカルな声で、かつ安定した歌唱ができるテノールは彼くらいかも。メトのライブHDに出まくっているのも納得です。普段はオッサンだけど、今回は素敵な髪型が若々しかったのに、あの衣装はなんだ!海水浴客のようなバミューダパンツはデレッとしすぎでしょう。(←ポレンザーニの罪ではありません)
ズルガ役のクヴィエチェンもライブHDに出まくってるけど、ポーランド人の彼が歌うフランスオペラは特にピンとこなかった。一時ドン・ジョヴァンニ役でブレイクしたけど、最近ちょっと大人しい印象があります。
肝心な、レイラ役のディアナ・ダムラウ。彼女は本当に歌は上手いし声も奇麗だけど、レイラのイメージじゃないですな。どっから見ても「強い女性」のダムラウさん、気合の入った踏ん張った歌い方が、清廉ではかなく可憐なレイラとは真逆。やっぱり神聖なレイラちゃんはコトルバスやアニック・マシスのような超可憐なソプラノでないとね~
演出は特にどうということもなく、特徴はプロジェクションマッピングによる海中を泳ぐ真珠採りや津波の映像くらいかな(あまり本質とは関係ない)。ラストシーンでズルガが殺されないのもなんか中途半端だったなあ。
と、文句が多くてすみませんでした。基本は批判は自粛してるのですが、真珠採りは期待が大きかっただでね。本来このオペラは、フランス的エスプリにグオーッと圧倒される傑作なんです。
(でも、もともとはノセダもダムラウもポレンザーニもクヴィエチェンも好きなアーティストなんですよ!)
→ 真珠採りの曲紹介とお薦め動画(1)フェニーチェ歌劇場 はこちらから
●真珠採り 全曲 2016年(すぐに消されると思いますので視聴はお早目に)
●ナディールのロマンス マシュー・ポレンザーニ お見事!!
※ ナディールのロマンスの歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●ナディールとズルガの2重唱 「聖なる神殿の奥深く」 ポレンザーニ、クヴィエチェン
●レイラのアリア おおデュー・ブラマ ディアナ・ダムラウ
●2幕フィナーレの合唱
●レイラとナディールの2重唱
●3幕 レイラとズルガの2重唱