真珠採り (ビゼー)
Les Pêcheurs de Perles (Bizet)
作品紹介(真珠採り)
ビゼーといえばカルメン、なので、それ以外のオペラが上演されることは滅多にないのですが、この真珠採りはビゼーの2番目に有名なオペラです。あまり知られていないのが本当にもったいない、叙情的で美しい音楽に溢れた素晴らしい作品です。
舞台はセイロン島、ヒロインのレイラは美しい尼僧・・・というと、ドリーブの「ラクメ」に酷似していて、どっちがどっちだか分らなくなったりするのですが(あれ、これはどっちの曲だっけ?ってなる)、この真珠採りの方がラクメよりも前に作られています。
当時のヨーロッパ人たちにとって、植民地や未知の東洋の国々は、ロマンをかきたてる存在だったのでしょうね。(プッチーニのマダム・バタフライや、トゥーランドットとかも)
ラクメのように欧米人は登場せず、ナディールとズルガは島の漁師(真珠採り)です。かつて美しいレイラを巡って恋敵だった二人が、久しぶりに再会し、過去は水に流そうと友情を誓い合っていた矢先、村の長老が顔をベールで隠した神聖な巫女を村の守り神として連れてきます。生涯友や恋人を持たずベールもとらずに人々のために祈ることを誓わされたレイラ。しかし歌声で彼女と知ったナディールの恋が再燃し、二人は逢引きしているところを見つかって処刑されることになるのですが、かつて命を助けてくれたのがレイラだったと知ったズルガが、身を挺して二人を逃す、という話。
大変エキゾチックなオペラですが、音楽は全然エキゾチックではなく「フランスオペラ感」満点。メロディーは甘く優しく、合唱は美しく、まったく素敵な作品です。
特に1幕で歌われるテノールのアリアが有名で、ナディールがベールの巫女がレイラだと気付いて歌う「ナディールのロマンス(耳に残るは君の歌声)」(「真珠採りのタンゴ」とも呼ばれます)は、単独でコンサートなどでもよく歌われます。
→ この曲の歌詞と読み、日本語訳を カラオケdeフランスオペラのページ に載せています。
(ところで、このナディールのアリアのどこが”タンゴ”なんだ?と思われるでしょうが、この曲を元にアルフレッド・ハウゼ楽団がコンチネンタル・タンゴに編曲したのが世界的に流行って、そのせいで逆にこのアリアまでそう呼ばれるようになったのだそうです。ストイックな元歌とタンゴのイメージは、かなりギャップがあるのですが)
また、ナディールとズルガの2重唱「聖なる神殿の奥深く」もよく知られた名曲です。男同士の2重唱って、普通あんまり美しい曲はないものですが、この恋敵であり親友でもある二人が、過去の恋と今の友情を歌いあげる2重唱は、稀有な美しさ!
男声2重唱では「ドン・カルロ(ヴェルディ)」のカルロとロドリーグのが有名ですが、あれはちと短いので、このナディールとズルガの2重唱がナンバーワンではないかと思います!
しかし名曲はこの2曲だけでは全然なく、レイラの歌もリリックなソプラノに最適な美しいアリアがたくさんあり(Comme autrefois や O Dieu Brahma) 、また、レイラとナディールの2重唱も大変見事で、また全編を通して合唱が誠に美しく、ビゼーというのは本当に素晴らしいメロディーメーカーだなあとつくづく感心します。
決してカルメンだけの一発屋ではないということが、この曲を聞けばおわかり頂けるでしょう。
CDでは1977年のプレートル指揮パリ、アラン・ヴァンゾとコトルバスの録音が大変叙情的な名盤だと思います。コトルバスの可憐なレイラがとてもチャーミング。
動画は2004年 アニック・マシスと中島康晴さんの映像(フェニーチェ歌劇場)が立派なDVDとして日本でも発売されています。ナディール役の中島さんは、日本人ながらフランス語も流暢で大変健闘しています。中島さんもマシスも、声がとてもリリックで意外なほど素晴らしいですよ!
→ 2016年 メトロポリタン歌劇場 ライブHD映像はこちら
お薦め動画(真珠採り)
●ナディールのロマンス「耳に残るは君の歌声」(真珠採りのタンゴ)
Je crois entendre encore 中島康晴
リリックで高貴で、それはそれは素晴らしいです。最後の1フレーズは歌ってませんが、ハイCを含む最後のフレーズは歌わない場合も多いようです。(下にアラーニャが全部歌ったのを載せてます)
※ ナディールのロマンスの歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●ナディールとズルガの2重唱 「聖なる神殿の奥深く」"Au fond du temple saint"
中島康晴、ルカ・グラッシ
●レイラのアリア その1 O Dieu Brahma (アニック・マシス)
村の守り神として、岸壁で祈りを捧げる歌です。
●レイラのアリア その2 Me voilà seule, Comme autrefois
夜の闇を怖れながら、かつてナディールが見守ってくれたことを思い出すアリア。
●ナディールとレイラの2重唱 その1 中島康晴、アニック・マシス
●ナディールとレイラの2重唱 その2 ”O lumière sainte”
大変美しく、私の大好きなデュエットです。「ああ聖なる光よ、何も怖れるものはない、共に死のう!」
二人のリリックで清廉で、毅然とした歌唱がとても素晴らしいですね!
●ナディールのロマンス(真珠採りのタンゴ) ロベルト・アラーニャ
アラーニャの美しいフランス語! 甘いのに男らしく情熱的な声!
(ゲッダのページにも同じ曲を載せています)
※ ナディールのロマンスの歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。
●ナディールとズルガの2重唱 (ニコライ・ゲッダ、エルネスト・ブラン)
●もひとつ、アラーニャとターフェルの2重唱 1996年メト やっぱりいい声ですね〜!
(でも中間部がカットされてます。上のフェニーチェのは全部です)
●フィナーレ、ナディールとレイラの二重唱(アラン・ヴァンゾ、イレアナ・コトルバス)
音声のみですが、名盤の名シーンです。コトルバスの清純なレイラが素晴らしい。
●2013年 サル・プレイエル(パリ) リハーサル風景 ロベルト・アラーニャ、ニノ・マチャイゼ
●音声のみ 全曲 2009年 ロベルト・アラーニャ、 ナタリー・マンフリーノ