ペネロープ (フォーレ)
Pénélope (Fauré)
作品紹介(ペネロープ)
フォーレがオペラを書いていたなんて、意外・・・と思うのではないでしょうか
厳密には「オペラ」ではなく、「Poéme lyrique」(抒情詩)なのだそうですが、通常はオペラと呼ばれています。
フォーレは静謐で高雅なイメージがあり、精神性の高い通好みの作曲家です。
日本でも「レクイエム」はとても人気があり、「俺の葬式にはこの曲を流してくれ」的な話をよく聞きますね〜(私も若い頃は「それもいいかも」と思ってたけど、通俗的に生きてきた今となっては、清廉すぎてちと怖れ多いかも)
ちなみにそのレクイエムは、モーツァルト、ヴェルディのレクイエムと並んで「3大レクイエム」と言われており、宗教音楽ファンや合唱団員にとっては偉大な聖なる曲です。
それ以外ではピアノ五重奏曲やピアノ四重奏曲、ヴァイオリンソナタ、歌曲などが有名で、いずれも渋めながら洗練された美しさが特徴ですね。渋いけれど非常に先進性があり、「かっこいいなあ」といつも思います。
で、このぺネロープもフォーレらしい透明な美しい作品。
20世紀に作られた作品であり、19世紀のフランスオペラよりも明らかに現代的で、語るようなフランス語がそのまま音楽になり、無調音楽への予感があります。
ガラスのような透明な美しさながら、温かに満ちているのがいいですね。
もう最初の一音から、グーッと独特のフォーレの音楽の世界にひきずり込まれます。なぜか懐かしい気がします。
音楽的にはペレアスとメリザンドに劣らない素晴らしい作品だと思うのですが、格段に人気がないのは、ストーリーがあまり劇的でないからでしょうか。やや歳いってる主役の二人が、ペレアスとメリザンドのように若くロマンティックだったら違っていたかも。。
題材は古代ギリシアの抒情詩「オデュッセイア」で、オデュッセウス(仏名ウリッセ)の妻ぺネロープが主人公。
トロイア戦争の英雄オデュッセウス(トロイの木馬作戦の指揮官)が、勝利はしたものの故郷に帰還するまで10年間も漂泊した間、妻のぺネロープが数10人もの言い寄る求婚者たちをかわしてひたすらに夫を待ち続けた、という話。
待つ間、織物を編んではほどき・・・を繰り返したという有名な逸話が登場します。最後はボロボロ身なりの老人姿のウリッセが「ウリッセにしか弾けない弓」で見事に矢を射て、勇壮な夫として再会し、大団円となります。
※あらすじはこちらのページが詳しいので、リンクさせて頂きます。日本フォーレ教会ぺネロープあらすじ
全曲録音としては、1982年シャルル・デュトワ指揮のCDが定番として素晴らしい演奏を聴くことができます。ぺネロープがジェシー・ノーマン、ウリッセがアラン・ヴァンゾ、老羊飼いがジョゼ・ヴァン・ダム、という理想的配役に加え、脇役にも実力者のフランス人をみっちり配置した、完璧な演奏です。YouTubeに全曲ありますのでどうぞフランスの香りをお聴きください。
(追記)2015年にストラスブールで上演された映像(たぶん全幕映像としては初めてのもの)がYouTubeに出ているので最下に追加しました。
お薦め動画(ペネロープ)
●ぺネロープ 1幕 ジェシー・ノーマン、 アラン・ヴァンゾ
●2幕
●3幕
2013年 コンサート形式ですが、本場のパリ、シャンゼリゼ劇場で上演されています。
(ペネロープ)アンナ・カテリーナ・アントナッチ、(ウリッセ)ロベルト・アラーニャ
●1幕 求婚者に迫られるペネロープがウリッセへの想いを切々と歌い上げるシーン、フォーレらしい大変美しい音楽です。(6:00頃〜) ハープとフルートの伴奏が実にフランス的で、ペネロープの歌とともに素晴らしい!
●感動的なフィナーレをお聴きください。なんと豊かで温かく輝かしい歌声でしょう!
アラーニャの輝かしくヒーローのオーラのある声、アントナッチも優しさ溢れるペネロープ。
●全幕映像 2015年ストラスブール市立劇場
アンナ・カテリーナ・アントナッチ、マルク・ラホ、ジャン=フィリップ・ラフォン
舞台が暗くて色彩が全くなく、ストーリー理解の助けには全くならない演出ですが、歌手陣は力唱です。
※この動画の日本語字幕は、個人の有志の方が付けてくださったようです。詳細は存じませんが、感謝申し上げます。