サムソンとデリラ (サン=サーンス)
      Samson et Dalila (Saint-Saëns)



作品紹介(サムソンとデリラ)

サムソンとデリラは旧約聖書に基づく物語で、怪力の英雄サムソンと異教の美女デリラを中心にした、ヘブライ人とペリシテ人の民族間の争いのドラマです。

当初はオラトリオとして構想されたそうで、民衆の合唱がふんだんに使われ重要な位置を占めているところにその面影があります。冒頭の長い合唱では四声のフーガもあり、さながら宗教曲の大作という趣です。

しかし、現在このオペラで一番有名なのは、バレエ音楽の「バッカナール」(酒神の宴)。
宿敵サムソンを捕らえたことに狂喜するペリシテ人の饗宴シーンで踊る、熱狂と陶酔の渦のようなバレエです。

フランスオペラといえば、Grand Opera=豪華なバレエつき、というイメージを持つ方も多いかもしれませんが(「オペラ座の怪人」の印象で)、19世紀前半に流行ったそれらのバレエつきグランドオペラも、現代まで残っている名作はそれほど多くありません。

その中で、このバッカナールは単独で演奏されることも多い名曲です。(特に吹奏楽でよく演奏されるようです)
異国情緒たっぷりで激しく官能的な音楽は、クラッシックバレエよりもモダンバレエが良く似合い、斬新な振りつけのバレエでたくさん上演されています。
グランドオペラに挿入されるバレエの中では、最も見ごたえのあるものだと思います。
下に、3種類のバレエ動画を載せていますので、どうぞご覧になってみてください。

標題役のサムソン・デリラは共に、過去の録音では絶唱型のドラマティックテノール、ドラマティックメゾによって多く歌われてきました。
フランスオペラは大抵はリリックで甘美な声の主役ですから、このオペラは珍しいパターンだったのですが、でもやはりこのサン=サーンスの華麗な音楽は叙情的に歌ってこそ、と思います。

特にデリラ(ダリラ)役は、サムソンを誘惑する官能的な歌の他に、最後の最後の歌でなぜか突然バロックオペラ風のコロラトゥーラが出現し(ペリシテ人の祝祭の歌。大僧正との輪唱風の2重唱でとても素晴らしい!)、重い声ではつとまらない難役です。
サムソンも、マッチョな英雄であると同時に、女に迷って破滅する哀れな男を演じてこそ。

美女ダリラは祖国のために敵のサムソンを誘惑し騙しただけで、甘美な愛のデュエットも真実の愛はなかった、というのがこれまでの解釈でしたが、2018年のエリーナ・ガランチャ演じるダリラは「ある瞬間において、ダリラは本当にサムソンを愛していたと思う」という新しい解釈のもと、愛と復讐の間で葛藤するダリラを演じていて、とても魅力的です。共演のロベルト・アラーニャも「サムソンが繰り返す”ジュテーム!”は単なる I love you ではなく、同時に神へのHelp me! の懇願であり、最後の叫びはまるで噴火のようだ」と述べ、苦悩するサムソンを描いています。

サムソンは最後に神から授かった力でペリシテ人の神殿を崩落させ、自爆テロのように敵を皆殺しにして自らも果てる、という壮絶なラストであります。

前述した通り当初はオラトリオとして作曲されたため、合唱が重厚でとても素晴らしく、私は個人的に、いつかこのオペラの合唱を歌ってみたい・・というのが夢のひとつです。


 → サムソンとデリラの詳しいあらすじはこちらから



お薦め動画(サムソンとデリラ)

●バッカナール   まずはメトのバレエ。最高に素晴らしい!



●同じくバッカナール  2001年 バルセロナ リセウ大劇場



●あなたの声に心は開く Mon coeur s'ouvre à ta voix
1981年 ROH  ヴィッカース、シャーリー・ヴァーレット

※「あなたの声に心は開く」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。



●春の訪れ  Printemps qui commence マリア・カラス



●こちらから全曲  2002年  アルチンボルディ劇場(ミラノ・スカラ座管弦楽団)
プラシド・ドミンゴ、オルガ・ボロディナ、ジャン=フィリップ・ラフォン、イルダール・アブドラザコフ
ダリラ役のボロディナが自分で「私に一番合っている曲」というだけあって、低音から高音まで滑らかな見事な歌いっぷりだこと。最後のコロラトゥーラも完璧で、これは惚れる!

(1幕)02:30〜、(2幕)50:40〜、(3幕)1:33:25〜、
(バッカナールのバレエ)1:45:30〜、(ダリラと大僧正の2重唱)1:59:45〜


フランス語ネイティブはラフォン(大僧正役)だけですねえ。やっぱり全然違うわ・・・ フランス人キャストで見てみたい曲です。



●愛よ、弱き私を助け給え "Amour! viens aider ma faiblesse" オルガ・ボロディナ



●2018年 ウィーン国立歌劇場
・「あなたの声に心は開く」エリーナ・ガランチャ、ロベルト・アラーニャ

※「あなたの声に心は開く」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。



●2018年 メトロポリタン歌劇場
・「あなたの声に心は開く」 エリーナ・ガランチャ

※「あなたの声に心は開く」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。



・「憐れな我を見よ」 ロベルト・アラーニャ



●2021年 オランジュ音楽祭 マリー・ニコル・ルミュー、ロベルト・アラーニャ
コロナ禍を乗り越え、オールフランス人による見事な上演です。

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