バンジャマン・ベルナイム (テノール)
Benjamin Bernheim 1985年生まれ
久々に現れた、待望の若いフランス人テノール。
まだ30代半ば、リリックで伸びやかな声と真摯な歌唱が素晴らしく、フランス語の美しさも際立ちます。
日本では、名前の読みが「ベルンハイム」「ベルネーム」など様々にカタカナ表記されていますが、最下に載せた動画で本人が「バンジャマン・ベルナイムです」とハッキリ言っている通り、フランスではバンジャマン・ベルナイム、の呼称で統一されています。
ただし、もともとフランスのアルザス地方(住民の大部分がドイツ系)の家系だそうで、バンジャマン自身ドイツ語圏の学校に通っていた時には「ベンニャミン・ベアンハイム」と呼ばれていたそうです。外国由来の姓なので、フランス人としての読み方は(たぶん)ご本人一族が決めたのでしょう。
数年前からフランスだけでなく世界的に注目を集めていたため、舞台でフランスオペラを演じる映像を心待ちにしていましたが、コロナ禍の2021年、パリで無観客収録されたファウストを全幕見ることができました! 期待に違わぬナイーヴで凛々しい歌唱に感激。また、同年ハンブルクではホフマン物語に主演し、待ちに待った若々しいフランコフォンのホフマンはまさに適役!です。
前年にはパリでマノンも歌っていて、ご本人はこれからフランス物を多く歌っていきたいそう。
鮮明なフランス語が美しく、Rは巻き舌でなく口蓋垂ふるえ音[ʀ]で歌っています(彼と同世代の仏人歌手でもRを巻き舌にする人の方が多い)。以前のインタビューで「今年Spotifyで最も聴いたアーティストは?」という質問に「ロベルト・アラーニャ」と答えていますが、おそらく仏語のディクションやRの発音はかなりアラーニャを参考にしていると思います。
フランスオペラのテノールは、明るいリリックな声が前提にも関わらず、繊細さと共に情熱的な表現力も求められ、かつハイノート必須なところがとても難しいのですが、ベルナイムは全てを充たしていると思えるので、今後がとても楽しみです。
お薦め動画
●ファウスト(グノー)2021年 パリ・オペラ座
このサムネイル画像はベルナイムではありません!(老博士は別の俳優が演じ、時々薬が切れると爺さんに戻っちゃう)
演出はややヘンテコだけど、難解なストーリーを的確に現代風に楽しく味付けしてなかなか優れてて気に入りました。ただし「ファウストオタク」の私的には「ここはNG」の箇所が2か所あるのがちょっと残念。。
●ホフマン物語(オッフェンバック)ケイとケック版 2021年 ハンブルク州立歌劇場
指揮:ケント・ナガノ、演出:ダニエル・フィンジ・パスカ、バンジャマン・ベルナイム(ホフマン)、オルガ・ペレチャッコ(ヒロイン4役)、ルカ・ピサロニ(悪魔4役)、アンジェラ・ブラウアー(ミューズ)
暗い演出で、演者たちもいかにもドイツ的に真面目で重く、オッフェンバックの軽妙さや弾けた楽しさが全くない舞台ですが、唯一ベルナイムだけがフランス的な軽やかな明るさを醸しています。ペレチャッコはヒロイン4役を熱演だけど、どれも似た雰囲気なのがやや残念。ピサロニの悪魔は迫力も面白さも今一つ。
●マノン(マスネ)瞳を閉じれば "En fermant les yeux"
●ロメオとジュリエット(グノー)ああ、太陽よ昇れ "Ah ! lève-toi, soleil ! "
●ウェルテル(マスネ)オシアンの詩 "Pourquoi me reveiller"
●真珠採り(ビゼー)聖なる神殿の奥深く avec ルドヴィク・テジエ
●ツイッター投稿 「バンジャマン・ベルナイムです」と名乗るのが聞けます
Taking you backstage and behind-the-scenes with me during Faust on the @operadeparis’ instagram stories. See you there! pic.twitter.com/jLwQ851lzo
— Benjamin Bernheim (@ben_bernheim) March 25, 2021
「こんばんは、バンジャマン・ベルナイムです。パリ・オペラ座でファウストのタイトルロールを歌います。皆さんをこのプロダクションのテイクオーバーにご招待します。フォローしてね。では後ほど」と言ってる。