白衣の婦人(ボワエルデュー)
 La dame blanche (Boieldieu)


作品紹介(白衣の婦人)

「白衣の婦人」なんて邦題だから、なんじゃこりゃ? ナースさん?・・と思ってしまいますが、これはヨーロッパで昔から「白い貴婦人(White Lady)として伝承される、古いお城などに幽霊のように現れて吉凶のお告げ的なことをする白い亡霊みたいな女性のこと。

その白い貴婦人が出てくるスコット(英国の作家)の小説を元にしたこのオペラは、「オペラ・コミック」形式の原型を作った作品とも言われ、1825年にパリのコミック座で初演されて以来、1000回以上も上演された大ヒット作だったそうです。

「オペラ・コミック」というのはフランス語のセリフが入った形態のオペラですが、必ずしもコミカルな内容というわけではなく、でも重厚壮大なグランドオペラと比較して軽妙な楽しさが特徴で、この作品もお化けは出てくるけど音楽もストーリーも親しみやすく、ハッピーエンドの明るいオペラです。

ボワエルデューは「フランスのモーツァルト」と呼ばれていたそうで、確かにモーツァルト風な旋律にフランス的な優雅さを加えて、さらに親しみやすく軽快にした感じ。美しいメロディーが次から次へと登場して、飽きさせません。

ジョルジュのアリア「来れよ優しい貴婦人(Viens, gentille dame)」は今も多くのテノールによってCD録音等がされていますが、ドン・オッターヴィオとかが歌いそうな歌です。1幕のジョルジュ登場の「兵士はなんて楽しい!」は元気いっぱいの陽気な歌、その能天気なほどの明るさは「連隊の娘(ドニゼッティ)」のトニオを思い出します。また、ジェニーが貴婦人について語るバラードは、いかにもストーリーテリングな豊かなメロディーで、一度聞いたら耳にこびりついて離れなくなること請け合い!

ラ・ダム・ブロンシュ(白い貴婦人)が登場するシーンでは必ずハープがタリラリラリン♪と奏でられ、ちょっと現代のミュージカルみたいな感じもします。
序曲は単独で演奏されることもあり、古き良きフランスの香りがしますが、これは「オペラ内の旋律をつなぎ合わせて弟子のアダン(ジゼルの作曲家)が作成したもの」と wikipedia(英語版) には書かれています。


あらすじ(白衣の婦人)

スコットランドの農家の若夫婦ディクソンとジェニーが幼子の洗礼式の準備をしていると、英軍士官のジョルジュと名乗る男が現れ、戦争で負傷し、見知らぬ娘が手当をしてくれて助かったが、娘が姿を消してしまったので探している、と語ります。
その国の領主であるアヴェネル伯爵と跡取り息子ジュリアンは共に戦時に行方不明となり、城を乗っとろうと企むガヴェストンによって城は競売にかけられることになっています。「きっとラ・ダム・ブロンシュが助けてくれる」と言ってジェニーは白い貴婦人の伝承を語り、ディクソンが白い貴婦人から「今夜城に来るように」という手紙を受け取ります。

怖がるディクソンの代わりにジョルジュが城を訪ね、城の老女中マルグリートに案内された部屋で「来れよ白い貴婦人」と歌います。すると貴婦人が現れ「明日の競売に来て指示に従うように」と告げます。
競売ではガヴェストンが最高額で落札しそうになった時、アンナ(伯爵の養女であり、負傷したジョルジュを助けた娘)が現れてジョルジュに高値をつけるよう指示します。ジョルジュは落札はしましたがお金を持っていないため、期限までに払わないと投獄されるとガヴェストンに脅されます。そこに白い貴婦人が現れ、ジョルジュは城の跡取りジュリアンであることを告げ、彼に金庫の鍵を渡します。怒ったガヴェストンが婦人のベールを剥ぐと、そこにはアンナ。喜んだジョルジュは彼女にプロポーズしめでたしめでたしとなります。


お薦め動画(白衣の婦人)

このオペラは今まで映像がなく長年音声だけで聴いてきましたが、コロナ禍の2020年~2021年、フランス各地で相次いで上演され、複数の全幕映像が出現しています!
オケやスタッフはマスクを付けて、無観客での収録ですが、いずれもこのオペラに相応しい軽快な演出で、地元の若い歌手たちの自然で美しいフランス語のセリフと、気さくな雰囲気ながら誠実な歌唱は、ミュージカルのように楽しめます。
コロナの困難な状況下にあっても新たな試み、チャレンジを続けるアーティストたちを、私たちも応援し続けたいと思います。

●全幕 2020年 レンヌ歌劇場


●全幕 2021年 ニース歌劇場(セミステージ形式)


●トレイラー 2020年 パリ・オペラコミック座(上記ニースとの共同プロジェクト)


●2幕 ジョルジュのアリア「来られよ優しい貴婦人」"Viens, gentille dame"
ファン=ディエゴ・フローレス


●同じジョルジュのアリアをニコライ・ゲッダで



●1幕 ジョルジュ登場のアリア  "Ah! quel plaisir d'être soldat!" 「兵士はなんて楽しい!」
ミシェル・セネシャル



●1幕 ジェニーのバラード"D'ici voyez ce beau domaine" ジャーヌ・バルビエ
「ここからあの美しい城をご覧なさい」ラ・ダム・ブロンシュの伝承を語るバラード。


●同じジェニーのバラードをマグダレーナ・コジェナーで(フランスオペラアリア集CD)
合の手を入れてるヘタクソなテノールは、なんとジャン・クリストフ・ケック氏!(音楽学者で、ホフマン物語のケック版を編纂してる彼!!)なぜ彼が・・?



●1幕 3重唱 "Grand Dieu! que viens-je donc d'entendre?"
白い貴婦人からの手紙を受け取り驚く3人のトリオ。
序曲のメロディーで軽快に歌われるとても素敵なアンサンブルです。
1961年 ミシェル・セネシャル、ジャーヌ・バルビエ、エメ・ドニア



●3幕 アンナのアリア "Enfin, Je Vous Revois, Séjour De Mon Enfance ! "
〜"comme aux jours de mon jeune âge"「私が幼かった頃のように」
アンナが幼い頃ジュリアンと共に過ごした頃のことを思い、城を守ろうと歌う。
1996年 アニック・マシス  指揮:ミンコフスキ



●2幕 "Pauvre dame Marguerite"「哀れなマルグリート」
主人のいない城を守る老女中マルグリートが、主人を想って歌う(のわりには明るい歌)



●1幕 ジョルジュとジェニーの2重唱"Il s'éloigne, il nous laisse ensemble"
モーツァルト風デュエットです。



●しばしば単独で演奏されることもある序曲。どこかで聞いたような耳覚えやすいメロディーです。



●全曲(ドイツ語上演)


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