青ひげ (オッフェンバック)
    Barbe-bleue (Offenbach)


作品紹介(青ひげ)

ヨーロッパに古くから伝承され、童話や小説やオペラにも多く登場する『青ひげ』をご存知ですか?
私は今までずっと、この陰惨で暴力的な変質者の話がとても苦手でした。

『城に住む青ひげ公は、5人の妻を次々に殺害し、6人目の新しい妻に秘密の部屋には決して入らないよう言い渡しますが、妻は誘惑に負けて鍵を開け中の前妻たちの死体を見てしまい、秘密を知った彼女をも青ひげは殺そうとする・・・』という話。(話によって人数が違ったり、殺すのでなく監禁だったりします)

こんな酷い話をオペラで見ても、辛く苦しいだけで、とても楽しむことはできないよ、って。
ところが!このオッフェンバックのオペレッタは、青ひげを完全にパロディー化したコメディに仕立て、陽気な音楽で笑わせてくれるという素晴らしさ!
私の青ひげアレルギーをぶっ飛ばしてくれて、あまりの嬉しさに快哉を叫んでしまいましたよ。

とにかくオッフェンバックの音楽が素晴らしい!溢れる泉のように新鮮で機智に富み、音楽だけで喜びに満ちているその上に、風刺に富んだコミカルな芝居の楽しさ!

今までこのオペレッタ「青ひげ」の映像は、フェルゼンシュタイン演出のドイツ語版があったのですが、やはりドイツ語だとまるで別物です。
2019年オッフェンバック生誕200年記念の、ロラン・ペリー演出のリヨン歌劇場の舞台がDVD化され、初めてこの作品の真価を知ることができました。

ロラン・ペリーのオッフェンバック演出はこれが11作目だそうですが、相変わらずマンガチックながら詩情に溢れた舞台は、美しく楽しくて最高!
青ひげ公役は、今回もオッフェンバック界のアイドル、ヤン・ブロン。史上最低のサイコパス男も、彼ならではの魅力で楽しませてくれます。(ブロンは地獄のオルフェ美しきエレーヌジェロルスタン女大公にんじん王の名演がありますが、引退表明してるのでたぶんこれが最後かも・・)

他の歌手たちも皆ハマり役で秀逸で、特に6番目の妻ブロット(田舎のアバズレ娘)役のエロイーズ・マスの体当たりド迫力演技は、現代の自由な女性像を体現していてスバラシイ!幽閉された前妻たちに「私についてきなさい!墓から出て自由を生きるのよ、さあ!」と歌うシーンなど、ジャンヌダルクか?ってほどカッコイー。
キュートでお茶目な王女や、トボけたいい味出してるの青ひげの家来のポポラニ、変な王様なら彼しかいない!って感じのボベーシュ王など、皆芸達者で、歌唱だけでなくコメディ芝居としても最高品質です!

生きる喜びがあふれてくる素晴らしいオッフェンバックのオペレッタ、もっと広く知られるべきなのに!と思う私です。



あらすじ(青ひげ)

5人目の妻を亡くした(殺した)青ひげ公から、新しい6番目の妻を探してくるよう命じられた部下のポポラニは、村の娘たちを集めてクジ引きで決めることに。みんな青ひげが先妻たちを殺してることを薄々知りながら、金持ちの魅力に勝てずクジに参加します。選ばれたのはナント、村一番のアバズレ男好きのブロット。青ひげは彼女の肉感的さに「なんとルーベンス風」と呆れつつも、城に連れ帰ります。一方、昔籠に乗せて川に流されてしまったボベーシュ王の娘を探していた廷臣オスカルは、クジ引きに使った籠に王家の紋章が入っていることに気づき、籠の持ち主フルレットを王の元へ連れ帰ります。

華やかな王宮も内部はドロドロで、王は妻の浮気相手をオスカルに命じて暗殺したりしています。青ひげが6番目の妻と結婚した挨拶に来ても、みんな「またか」とウンザリ。フルレットは王女に戻ったばかりに恋人の羊飼いサフィールと別れさせられたと嘆きますが、実はサフィールの正体は許嫁の隣国王子と分かり大喜び。しかし王女の美しさを青ひげが気に入り、7番目の妻にしようと目論みます。そこに来たブロットは、王宮のマナーなどお構いなしに好き放題振舞って、王様にブチュッとキスをして皆を仰天させます。

青ひげの城の地下室で、ポポラニはブロットを殺すよう命ぜられ、渋々ながら毒殺して青ひげを満足させます。しかし実は毒ではなく睡眠薬のためポポラニの電気ショックで生き返ったブロットは、ポポラニから事の成り行き(5人の前妻も同様に生き返って、秘密の部屋でポポラニの愛人として暮らしている)を聞き、前妻たちに「墓から出て自由に生きるのよ!私についてきて!」と呼びかけます。前妻たちもポポラニも、青ひげに復讐するぞ!と喜びます

王女の結婚式がまさに始まろうという時に、王宮に乗り込んだ青ひげが「6番目の妻は死んだ、王女と結婚するのは私だ!」と脅迫すると、王子が決闘を申し出ますが、青ひげが勝ってしまい王女の結婚相手が変わってしまいます。大混乱のドサクサの中、ポポラニとオスカルが復讐を画策。実は生きていた5人の妻と、同様にオスカルが殺さず匿っていた王妃の5人の浮気相手をジプシーに変装させ、占いを装って王と青ひげの悪事を暴きます。仮面を外した前妻たち5人と暗殺したはずの5人にご対面した二人は言い逃れできず。王子と王女はめでたく結婚、5対5男女もカップルとなり、残った青ひげは殊勝にも謝ってブロットと仲直りしてメデタシメデタシとなります。

※原語リブレットはこちら → Offenbach Edition Keck



お薦め動画

2019年 リヨン歌劇場 ロラン・ペリー演出の素晴らしいプロダクションです!
出演:ヤン・ブロン、エロイーズ・マス、ジェニファー・クルシエ、クリストフ・ゲ

●トレイラーから2つの名シーン
(1)青ひげ登場シーン:「1番目の妻は死んだ、2番目3番目も、さらに4番目も死んで涙した。先週には突然5番目まで!」と嘆くが、この後の2ndクプレでは「6番目はもう決まっている。それがどうなるかも分かってるから、7番目も探そうかな・・」と続きます!
(2)ブロットが前妻たちを自由に導くシーン:「墓から出て生き返るのよ、私について来なさい!自由になるのよ!」



●1幕 村娘フルレットと羊飼いサフィールが初々しく早朝デート(実は二人とも本当は王女と王子)。フルレットがお茶目で可愛い!



●2幕 政略結婚を嫌がっていた王女は、相手が恋人サフィールと知って大喜び。続く王家の謎のお茶シーンも可笑しい。



●同じ演出でマルセイユ歌劇場で上演された際のトレイラー



●1991年 東京 ベルリン・コミーシェオーパー 演出・フェルゼンシュタイン
日本語字幕付き(ドイツ語歌唱)残念ながらフランス語での軽妙洒脱さはありません。。



●2013年 ドイツでの上演 指揮:アーノンクール
セリフはドイツ語、歌唱はフランス語だけど、歌のテンポが遅くやはり軽妙さに欠けるな・・





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