鳩 (グノー)
 La Colombe (Gounod)


作品紹介(鳩)

傑作「ファウスト」の翌年に作られたこの「鳩」は、拍子抜けするほど軽いコメディで、「オペラ・コミック」というのは元々はこういう軽妙な物だったのだな、と思い知ります。(その後のオペラコミックは、仏語のセリフ入りオペラを意味し、必ずしもコミカルな内容ではないのですが)

歌よりもセリフの方が多いかというほど芝居部分が長く、早口のフランス語でのコメディ演技が肝なので、歌だけ歌えても務まりません。ラ・フォンテーヌの寓話(教訓的なお伽話)を元にした台本ですが、ストーリーは他愛ないので、楽しく笑わせてナンボ、と思います。

現在もたまーに上演されることはあるようですが、2015年に『オペラ・ララ』から立派なCD録音が出たことでちょっとだけ注目されました。この『オペラ・ララ(Opera Rara)』というのは、忘れられ上演されなくなった埋もれたオペラを発掘して録音しているイギリスの団体で、超絶マイナー作品の録音なのに一流歌手が参加することが特長です。この「鳩」も、ハビエル・カマレナという現在売り出し中の人気テノールが主役を歌っています。

でもやはり、録音だけではコミカルさを伝えるのはちょっと難しい。
YouTubeには舞台映像もいくつか出ていますが、ラ・ペニッシュ・オペラというパリのオペラ興行団体の映像が笑えて楽しめます。高ビーお嬢様のシルヴィと冴えないオラスのドタバタが可笑しく、その中にグノーらしい美しい歌が挟まることでしっとり聞き惚れる。たぶん元々そういう芝居だったのでしょう。


あらすじ(鳩)

フィレンツェの元領主オラスは財産を失い、田舎で養子のマゼと貧乏暮らしをしていますが、裕福な女伯爵のシルヴィに密かに恋し、ペットの鳩にシルヴィと名付けて可愛がっています。シルヴィは社交界のライバルのアミンテが歌ったり喋ったりするオウムを飼って人気者であることを羨み、鳩を欲しがりました。シルヴィの執事ジャンは、オラスに鳩を高値で買いたいと持ちかけますが、オラスは貧しいにも関わらず大切な鳩を手放しません。ジャンはオラスがシルヴィに恋をしていることに気づき、シルヴィ自身に頼みに行かせます。

シルヴィの来訪に喜んだオラスはディナーを用意しようとしますが、貧乏で何も食材がなく、悩んだ末にマゼに大切な鳩を使うよう命じます。ディナーを食べながら、いよいよシルヴィが来訪の目的「鳩を売ってほしい」を告げると、ああ!と天を仰ぐオラス。鳩はもういない、食べてしまったのです!と言うオラスに、シルヴィはショックで言葉が出ませんが、自分への愛のための犠牲に心打たれます。そこへマゼが鳩を連れて入ってきます。驚く皆に「シルヴィよりも先に、脱走した赤いオウムが罠に飛び込んだのです」と説明、「まあ!私が今食べたのは、アミンテのオウム!」「・・ではもう鳩は必要ありませんか?」「いいえ、彼女は毎日私にあなたの愛を伝えてくれるでしょう!」とメデタシメデタシで幕となります。


お薦め動画(鳩)

●オペラ・ララの録音(全曲が25本のプレイリストになっています → プレイリスト
指揮:マーク・エルダー、ハビエル・カマレナ、エレン・モーリー、ロラン・ナウリ



●2009年 ラ・ペニッシュ・オペラ
小さい劇場のピアノ伴奏上演だけど、バカバカしい可笑しさはこれが一番です。



●2013年 Teatro dei Rinnovati, Siena
セリフ部分をプーランクがレチタティーボに書き替えたバージョンです。



●2019年 Jerusalem Opera



●1995年 コンピエーニュ・インペリアル劇場 指揮:ピエール・ジョルダン 9本のプレイリスト
名演を数多く生んだコンピエーニュだけど、これはちょっとイマイチかも。マゼがなぜかメゾでなくテノールが歌ってる。



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