シラノ・ド・ベルジュラック (アルファーノ)   あらすじ   STORY



詳しいあらすじ (シラノ・ド・ベルジュラック)

※原作はエドモン・ロスタンの戯曲ですが、ここではアルファーノのオペラのあらすじを記載しています(ほぼ原作通りですが)。
オペラの作品紹介とお勧め動画は、こちらのページをご覧ください。



(1幕)
ブルゴーニュの芝居小屋。桟敷席に座る美しいロクサーヌの姿に、男達は賞賛の声をあげます。美男のクリスティアンもその一人。

舞台では俳優のモンフルーリーがセリフを棒読みしていると、客席から突然、「この大根野郎! もう出てくるなと言ったはずだ。さっさと消えないと張り倒すぞ!」という声がします。

観客が驚いて振り返ると、そこにはシラノ。
臆したモンフルーリーが尻尾をまいて逃げると笑い声が起こります。ド・ギッシュ公爵お抱えの俳優が馬鹿にされたのを見て、子分のヴァルヴェール子爵は怒り「高慢ちきな田舎者!悪党め!」とシラノに詰め寄ると、「俺のエレガンスは心の中にあるのさ。我こそは、シラノ・サヴィニヤン・エルキュール・ド・ベルジュラック!」と名乗りをあげます。

「やるか!」
「よし、お手合わせしてやるぜ。ついでの俺様の詩を聞かせてやろう。決闘中に即興のバラードをな、題して『ド・ベルジュラック様と腰抜け野郎の決闘のバラード!』」

興奮した観衆が見守る中、シラノは帽子とマントを投げ出すと、即興で軽妙なバラードを歌いながら、子爵と剣を合わせます。
自在に立ち回りながら、フランス語で見事に韻が踏まれた詩を即興で詠うシラノに拍手が起こり、バラードの結句で一突き! 子爵が倒れると、「ブラボー!英雄だ!」とシラノを称えます。

騒ぎが静まると親友のル・ブレが、快傑ながら喧嘩を売っては敵を増やすシラノを心配して、なぜそんなにモンフルーリーを憎むのかと尋ねます。シラノは、モンフルーリーがある女性に色目を使っていたこと、自分はその人を愛しているが、己の醜い大きな鼻がそれを許さないことを話し始めます。
「この鼻は、俺より15分も前に着いちまうんだぜ、そんな俺が誰を愛せるというんだ・・・ああ、知ってるさ、その人は世界で一番美しい人だ!」

そこへロクサーヌの侍女がロクサーヌの手紙を持って来ます。「明朝ラグノーの店でお会いしたい」という恋する人の手紙に、天に昇る心地になるシラノ。

そこへ友人リニエールが現れ、百人もの敵にネール門で待ち伏せされている、と助けを求められると、剣豪シラノは「よし、行くぞ! 門を開けろ!霧のパリで見物が始まるぞ!」 と気勢をあげネール門に飛び出して行きます。



(2幕・1場)
ラグノーの菓子店。
パティシエたちが忙しくケーキを作っていると、シラノが入って来ます。

ロクサーヌを待つ間、彼女への思いを手紙にしたためていると、店の客たちが昨晩のネール門の決闘の話を声高に話します。「たった1人で8人もの悪党を斬って捨てたんだ!」と。
シラノは「8人? 7人だと思ってたぜ・・」とつぶやきますが、そのヒーローを知っているのかと尋ねられても知らん顔を通します。

ロクサーヌがやって来ます。「昨日はありがとうございました。しつこく言い寄ってくる公爵たちをやっつけてくださって」と礼を述べ、従兄妹同士の二人は幼い頃の昔話などをし、やっとロクサーヌは本題に入ります。

「お従兄さま、実は私はある方を愛しているんです・・その方もたぶん私を愛してくださっている・・彼はお従兄さまと同じ連隊に入ったばかりの勇敢で美しい方なんです!」
淡い期待から絶望の底に落とされたシラノは、ああ!と呻きながらも、ロクサーヌが恋する新入隊の男を守ってやることを約束します。

ロクサーヌが去ると、ド・ギッシュ公爵が現れ、仲間たちと詩を放歌するシラノに「詩人は贅沢品だ。私のお抱え詩人にならんか」と誘いますが、シラノは「いいえ、私は誰のものにもなりません。私は自分の好きなように歌い、笑い、夢を見て、自由でいたいのです」と答えます。

連隊では、新入りのクリスティアンに先輩が忠告します。「この隊では禁句がある。首吊りのあった家で縄の話が禁句なように、ここでは、シラノの前では鼻のことを言ってはいけない」と。

しかし、そう言われると余計にシラノの並外れて大きい鼻が気になるクリスティアンは、シラノが話している間中「鼻! 鼻!」と言い続けシラノを怒らせます。「誰だこの馬鹿野郎は?」、とそれがロクサーヌの想い人と分かり「よりによってこいつか・・・」と失望しますが、それでも二人だけになると「さあ、キスをしてくれ」と言って、ロクサーヌの思いを伝えます。

とたんにクリスティアンは大喜びして「あなたを崇拝します!」とコロッと態度を変えますが、「ロクサーヌは君の手紙を待っている」と言われて今度は落ち込みます。

「僕は愚かで口下手で、しゃべったらお終いなんです。愛を語る術を知らない! ああ雄弁だったら!」と正直に泣きつかれ、シラノは「よし、俺が手助けしてやろう、代わりにおまえの身体を貸してくれ。二人でロマンのヒーローになろう」「・・え・・なぜそんなに?」「ああ、詩人魂に火がつく。俺が君のエスプリになり、君が俺の美貌になるんだ!」

感激したクリスティアンはシラノに抱きつき、様子を覗きに来た隊員たちは、怒ったシラノに殺されているかと思ったクリスティアンが彼と抱き合っているのを見てビックリ、大笑いになります。


(2幕・2場)
ロクサーヌの家のバルコニーの下。
ド・ギッシュ公爵がやってきて、近衛隊長に任命され戦地に出発することを告げます。ロクサーヌはその隊のクリスティアンも出征することを知りショックを受けますが、最後の晩だからと執拗に逢引に誘う公爵を体良く追い払います。

シラノと共にやってきたクリスティアンは、シラノのアドバイスに「もういやだ、いつも役を演じるのは疲れた、今日こそ自分で彼女に話す!」と言って一人で彼女の元へ行きます。
胸を高鳴らせたロクサーヌは、「さあ、お話してください、愛について・・!」と促しますが、クリスティアンは「愛しています・・・とても・・・君をとても愛しています」と繰り返すばかり。 詩的な愛のささやきを期待しているロクサーヌは、失望して帰ってしまいます。

「助けてくれ!」とクリスティアンにすがられたシラノは、「やなこった!」と言いつつも「死んでしまう!」と懇願されて助けてやることにします。
「闇夜だから大丈夫だ。俺が下からセリフを教えてやる」と言って、ロクサーヌを呼ばせます。

シラノが小声で言う通りに愛の言葉を繰り返すクリスティアンに、「まあ、さっきよりもお上手だわ。でもなぜ、そんな切れ切れにおっしゃるの?」と訝るロクサーヌに、ついにシラノが彼に代わって自分で語り始めます。

朗々と語るうちに熱し、我を忘れたように夢中に愛を歌う詩人シラノの情熱に、「ああ、なんて甘美なんでしょう、これが真の愛だわ。私はあなたのものです!」とロクサーヌが陶然となったところで、シラノはクリスティアンに「(バルコニーに)上がれ!」と促します。躊躇するクリスティアンをド突いて上らせると、二人は「ああ、愛する人!」と熱く抱擁し口づけを交わします。


(3幕)
ガスコン青年隊の野営地。
疲れた兵士たちが休んでいると、シラノが戻ってきます。危険を冒して手紙を出しに行っていたのです。

もう疲れて、腹も減って、死にそうだと訴える若い兵士たちに、シラノが慰めるように歌を歌い始めます。生まれ故郷の優しい夕暮れに屋根から出てくる煙のような歌「聞け、ガスコン」に、皆そっと涙をぬぐいます。

そこに隊長のド・ギッシュ公爵が現れ、突撃準備を告げます。
死を覚悟したクリスティアンは、ロクサーヌへ最後の手紙を書こうとして、既にシラノが代筆済みであることを知ります。しかも毎日2通も自分になり代わって手紙を書き、見張りの目を盗んで出しに行っていたこと、最後の手紙には涙の跡が染みていることを。

その時、「国王からの遣い」と称する馬車が到着し、なんと、ロクサーヌが飛び降りてきます。
「狂気の沙汰だ!どうやって来たんです?」と驚くシラノに、「敵陣を通ってきたのよ。スペイン兵に見つかった時は、にっこり微笑んで、恋人に会いに行くのです!と言ったら『お通りくださいセニョリータ』って。ごめんなさいクリスティアン、夫に会いに行くと言ったらきっと通してくれなかったわ!」 と言って、連れてきたラグノーにご馳走まで振舞わせます。

どうしてこんな危険を冒して?と問うクリスティアンに、「あなたからのお手紙がとても素晴らしかったから、あなたの魂の真の愛を感じたから、あなたの美貌に惹かれて恋したことを許してもらいに来たんです。例えあなたが醜くても、あなたを愛することを誓うわ!」

その言葉にクリスティアンは青ざめ、シラノの元へ行き言います。
「彼女が愛しているのは僕ではない、君だ! 君も彼女を愛しているのを知っているぞ」
「そんな馬鹿な」
クリスティアンはロクサーヌを呼び、シラノに自分で確認するように言うと戦場に出て行きます。

ロクサーヌが再度シラノに「例え醜くても、私は彼の心を愛します」と言った時、敵の攻撃が始まります。
「僕は・・ロクサーヌ、聞いてください・・」とシラノが言いかけた時、射撃で重傷を負ったクリスティアンが運び込まれてきて、シラノが代筆したロクサーヌ宛の手紙を握りしめたまま息絶えます。

「退却するな!退却するな!!これがガスコン青年隊だ!」と、シラノは敵陣に突撃してゆきます。


(4幕)
15年後、パリの修道院の中庭。
喪服姿でここに暮らすロクサーヌの元に、ド・ギッシュ公爵やル・ブレが訪れて話をしてゆきます。

毎週土曜の決まった時間にシラノが訪れ、陽気な世間話でロクサーヌを慰めていたのに、その日は珍しく遅れて、ひどく蒼ざめ帽子を目深に被って現れます。
プラタナスの葉が美しく舞い散るのを見て、「去り際を知っているようだ・・」とつぶやき、椅子に腰掛け新聞を読んでいるうちに気を失ってしまいます。

心配するロクサーヌに、「古傷が痛むだけです、もう大丈夫」と気丈に振る舞うと、
「お互い古い傷がありますわね。私の傷はこの黄ばんだ手紙。涙と血のついた・・」
「彼の手紙ですね。読ませて頂けるんですか?」
「お望みでしたら、どうぞお読みください」

ロクサーヌが編み物をする傍で、シラノは手紙を読み始めます。日が落ちてきます。
「ロクサーヌ、さようなら、僕はもうすぐ死ぬでしょう・・・もう二度と愛しいあなたにくちづけすることはできない・・でも、僕の心は未来もあの世でもあなたから決して離れはしない・・」

「・・・・この読み方!本当に読んでいるの?この声は・・初めて聞く声ではないわ・・・!」
ロクサーヌはそっとシラノに近寄り、もう夜になり深い闇の中で手紙の文字が読めるはずもないことを知ります。

「あなただったのですね!たくさんの手紙も、狂おしい愛の言葉も、あの晩の声も・・・・あなただったのですね!」
「いや、決して・・」
「あの心は、あなたの心だったのですね!」
「いいえ、違います!」
「この涙の跡は、あなたのものなのですね!」

そこにル・ブルとラグノーが駆け込んできます。
「やっぱりここだったのか!このままでは死んでしまう!暗殺者に後ろからやられたんだ・・」
帽子を取ると、頭に巻かれた包帯に血が滲んでいます。

「ああ神様! シスター!!」
「いや、誰も呼ばないで!」
「あなたを愛しています、生きてください!ああ私があなたを不幸にしてしまった!」

「あなたが?ああ、私は行かなければなりません。・・・手助けは不要!立って剣を持って待っているぜ!・・・来たな!鼻をジロジロ見やがって、何者だ!分かっているさ、・・虚偽、卑怯、偏見!ああ、最後は俺が倒れるのは承知の上だ、それがどうした!俺は戦う!戦う!・・戦うぞ!」

修道女たちの祈りの声が聞こえてきます。
「おまえたちは、全て奪ったと思っているだろう。月桂樹の冠も薔薇の蕾も!奪うがいいさ、・・だがな、俺にはたった一つ、皺も染みもつけずにあの世まで持っていくものがあるんだ!それは・・・」
シラノは剣を掲げて立ち上がります。

しかし、よろめいてル・ブルとラグノーの腕に倒れこみます。
「・・それは?」
「俺の、羽飾り(心意気)さ!」

とつぶやき目を閉じるシラノの額に、ロクサーヌが優しくキスをします。






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