イスの王様 (ラロ)
Le Roi d'Ys (Édouard Lalo)
作品紹介(イスの王様)
”椅子の王様” じゃないですよ。
イス(Ys)というのはフランスに伝わる伝説上の都市の名前で、大洪水で一夜にして水没したのだそうです。その伝説に基づくのがこのオペラ。
原語の「ルロワディス」という発音がフランスぽくていいですね〜
フランスオペラも、ラロまで来ると相当マニアックな世界で、フランス本国以外で上演されることは滅多にないのですが、でもなんともフランス的な香気溢れる音楽で、しかも大変ドラマティック。
一部にワーグナーのソックリさんメロディーが出てくるのはご愛敬ですが、全体に美しい合唱が多用され、オーケストラの響きもフランス的で、ラロ独特の幻想的な世界をつくっています。
ストーリーは、同じ男性(ミリオ)を愛してしまったお姫様姉妹(イスの王様の娘)のうち、振られた方(マルガレード:姉)が腹いせに敵国の王子と組んで水門を開いてしまい、イスの町が大洪水で水没しそうになるけれど、最後には彼女が自ら生贄となって神の怒りを鎮めて水がひき町が救われるという話。
ミリオが歌う「愛しい人よ」(Vainement ma bien aimée)が有名で、よくコンサートなどでも歌われます。
婚約者(ローゼン:妹)の部屋の前で愛を告げる、フランス的な軽快なテノールのアリアです。
動画もちゃんとあるんですね! いかにも地元、って感じの上演で、主演はナタリー・マンフリーノとラコニー。このコンビはオランジュ音楽祭でミレイユもやっていて、超一流とまではいかないけれど、フランスローカルでは人気の実力派です。こういう上演、見てみたいわ〜
ちなみに、ラロという作曲家は、わりと知られている曲はヴァイオリン協奏曲(スペイン交響曲と呼ばれています)とチェロ協奏曲がありますが、オペラもこのイスの王様の前にもう1曲「フィエスク」という作品を作っています。しかし、フィエスクは1度も上演されることがなく埋もれてしまい、惜しんだラロ自身がこのイスの王様に一部転用しています。
ところが!2006年にモンペリエ音楽祭で150年ぶりにこのフィエスクが世界初演され、録音も残されています。なんとまあ壮大な時を経た初演ですが、音楽は古臭いどころか実に瑞々しく素晴らしいですよ!
その音声も下に載せていますので、お聴きください。
お薦め動画(イスの王様)
●「愛しい人よ」 Vainement ma bien aimée 2007年 フロリアン・ラコニー
●Oui le seigneur est bon pour nous ラコニー、ナタリー・マンフリーノ
一番下に載せた「フィエスク」からメロディーが転用されています。(こっちはデュエットになってます)
●同じプロダクションですが、こちらは2008年ベルギーの上演
しかし、何だって装置も衣装もこんなに辛気臭い苔色なんだ??
●2014年にマルセイユで再演されました。(インヴァ・ムラ、ベアトリス・ユリア・モンゾン、フロリアン・ラコニー)
辛気臭い苔色と思っていた衣装は、上品な深緑であることが判明。敵の真紅と鮮やかなコントラストになってたのね。
●Vainement, ma bien aimée ロベルト・アラーニャ
アラーニャのキャバレーで鍛えた裏声(自然に切り替わる!)がいいですね〜
●序曲(音声のみ) BBCフィルハーモニック
●全曲(音声のみ) 指揮:アンドレ・クリュイタンス
●フィエスク 2006年 世界初演 ”フィエスクの夢” ロベルト・アラーニャ
上の「イスの王様」の2番目の動画の曲とメロディーが同じなのが分かると思います。