ロメオとジュリエット(グノー) 
      Roméo et Juliette(Gounod)



作品紹介(ロメオとジュリエット)

ロミオとジュリエットはグノーのオペラの中で「ファウスト」に次いで有名な作品ですが、20世紀後半の一時期ほとんど上演されなくなり、このまま息絶えてしまうのか・・・と思われました。適切なジュリエット役、ロメオ役がなかなかいなかったから、という理由もあったのでしょうか。(当時は太った椿姫やミミなど日常茶飯事でしたが、だんだん違和感を覚え始めた時代でした)

しかし、昨今の美貌ソプラノラッシュのおかげで、あれよあれよと蘇り、有名オペラハウスのレパートリーに復活したのはまったく予想外で、本当に嬉しいことです。

1994年のレオンティーナ・ヴァドゥヴァ、次に2002年のアンジェラ・ゲオルギュー、そして2007年のアンナ・ネトレプコ。いずれ劣らぬ美貌と実力の持ち主で、美しさにかけてはガップリ四つの勝負!
ノーブルなジュリエットもいいし、おきゃんなジュリエットもまたよし、どうぞ聴き比べ、見比べてくださいませ。

そして、ロメオ役はすべてロベルト・アラーニャです。彼なくしてこの作品の復活はあり得なかったでしょう。まだ初々しい少年の面影が残る頃から円熟期まで、ロメオといえばアラーニャ、彼の最高の当たり役の一つです。フランス語の美しさでは当代随一、若々しく輝く瑞々しい美声が素晴らしい。

アラーニャは1994年のロメオ役で、イギリスのローレンス・オリヴィエ賞をはじめいくつかの賞を受賞し、スターダムを上ってゆきます。(しかしその公演は最初の奥さんを脳腫瘍で亡くした直後だったのだそうで、カーテンコールは涙なくしては見れません)

と、話が横にそれましたが、音楽の方はグノーならではの流麗で切なくも優しい旋律が全編に溢れ、愛のデュエットがこれでもか!と続き、それはもうめくるめくフランスオペラを心ゆくまで堪能できる名作です。メロディーラインの美しさ、グノーならではの煌めくようなオブリガートの美しさはファウストに比肩します。

まずは出会いのシーンのデュエット、続いてロミジュリといえば有名なバルコニーシーンのデュエット、それから初々しい婚礼の夜のベッドでのデュエット、そしてデスシーンのデュエット、と甘いロマンティックな歌攻め。特に婚礼の夜のデュエットは、これぞフランスオペラ!どうぞこの甘美の海に溺れてください!って感じ。下の動画でも、それぞれ素晴らしい演出、演技、歌唱で別れを惜しむ二人の世界を魅せてくれます。

お聞き、ジュリエット もうヒバリが夜明けを告げている。
ノン、まだ夜明けじゃないわ、ヒバリじゃない、あれはナイチンゲールの甘い歌。
いや、あれはヒバリ、東の空はもう朝焼けに染まっている・・
まだ朝じゃないわ。あれは夜の星の柔らかな光。ロメオまだここにいて!
・・・ああ、死よ、来るなら来い、僕はここにとどまろう!

いいえロメオ、あなたの言う通り、もう朝よ、お別れのときだわ
ノン、まだ夜明けじゃない、ヒバリじゃない、あれはナイチンゲールの甘い歌・・・
いいえ、あれはヒバリよ、夜明けを告げる鳥。
もう少し、もう少し、このままずっと抱きしめていたい・・・!

しかし、愛のデュエットが延々と続くということは、とりもなおさず、駄歌手で聴くと地獄の責苦が待っているということです。ロミジュリを聴いて「感動した!」という人と「退屈すぎて寝た」という人の真っ二つに分かれるのはいたし方のない事実でありましょう。最悪のケースだと、ラストのデスシーンで「えーい、もういい加減死なんかい!」なんてことになってしまいます・・・

若い二人がお互いを求め合う切羽詰まった思いが表現できるかどうか、が分かれ目でしょうか。よい演奏で聴けば、ロマン主義絶頂の究極の甘美が、切なく胸にせまる作品だと思います。

なお、ジュリエットの「私は夢に生きたい(Je veux vivre)」が、コロラトゥーラソプラノのアリアとして有名でよくコンサートなどで歌われますが、これは1幕でまだロメオと運命の出会いをする前のジュリエットが、乳母に伯爵との結婚を勧められ「そんなことを言わないで、まだ夢の中にいさせて」と人生の春を謳歌して無邪気に歌う歌で、その後愛を知ってたおやかに変化してゆくジュリエットとは別人の歌といえるでしょう。

※「私は夢に生きたい」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。



→ ロメオとジュリエット(グノー)詳しいあらすじはこちらから


お薦め動画(ロミオとジュリエット)

(1)

まず何といっても素晴らしいのは、1994年 ROH ロベルト・アラーニャ & レオンティーナ・ヴァドゥヴァ
グノー没後100年記念公演  このオペラの復活のきっかけとなったプロダクションです。
アラーニャもヴァドゥヴァも初々しくひたむきな若い青さが素晴らしく、歌声も演技もロメオとジュリエットそのもの。この作品でこれ以上はあり得ないだろうという歴史的名演です。

●出会いのシーン 2重唱  "Ange adorable"



●Ah, leve-toi soleil  ああ、太陽よ昇れ
太陽のように輝くジュリエットを思って歌う、テノールの名アリアです。



●バルコニーシーン
ジュリエットが去った後、テノールの朗唱に美しい弦のオブリガートが重なるシーンは、いかにもグノーらしい大変美しい場面です。アラーニャのタイトにコントロールした歌唱が素晴らしい。



●Ah, jour de deuil ティボルト刺殺の罪で追放を言い渡され絶望に慄く
まだ少年の面影が残るアラーニャは歌も姿も朗々と美しく、ロメオの生き写しです。
最後にハイCがありますが、渾身の絶唱!



●婚礼の夜のデュエット Nuit d'hyménée... il faut partir ,hélas!
なんと美しい。 無垢で一途な少年少女らしさが実に切ないです。
ヴァドゥヴァは好き好きオーラが出ていて、本当に可愛らしいジュリエット。歌も二人ともベストです!(後の二つは短縮されてるので、ノーカットで聴けるのはこれだけです)



●Salut! tombeau!
ジュリエットの墓を訪れるロメオ この作品最高の聴かせどころです。グノーの名作&名唱。



●デスシーン
アラーニャもヴァドゥヴァも、ひたむきな清廉さに胸が痛くなります。



(2)

続いては、2002年 オランジュ音楽祭 アラーニャ&アンジェラ・ゲオルギュー夫妻の共演で

●バルコニーシーン O nuit divine!... Ah! ne fuis pas encore



●ああ太陽よ昇れ Ah! Lève-toi, soleil!  
いかにもフランス人ロメオ。フランス語の美しさが傑出しています。



●婚礼の夜のデュエット Nuit d'hyménée... il faut partir ,hélas!
実のご夫婦でのヌイ・ダムール(愛の夜)・・・「実生活もロミオとジュリエット」(アラーニャ談)なのだそうです・・・



●Salut! tombeau! 
仮死状態のジュリエットを見つけて嘆くロメオ、甘くリリカルだけど男らしい声がいいですね
ああ、ロメオ君、そこで毒を飲むのを早まらなければ・・・と見るたびに思う私..



●デスシーン


これだけ甘美な愛の物語なのに、最後の台詞が「主よ、主よ、私たちをお許しください」というところが、グノーらしい最後のこだわり、という感じで、ラストの清廉さが印象的です。



(3)

最後は2007年 メトロポリタン歌劇場(ライブHD) ロベルト・アラーニャ & アンナ・ネトレプコ

●「私は夢に生きたい」Je veux vivre
最後にブッ倒れる前のアンナちゃんの顔!  こんなジュリエット見たことない~

※「私は夢に生きたい」の歌詞とカタカナ読み、訳を カラオケdeフランスオペラ のページに載せています。



●婚礼の夜のデュエット Nuit d'hyménée... il faut partir ,hélas!
満天の星空に宙づりのベッドで抱き合って歌う2人・・・すごいです~
アンナちゃんの玉のような愛らしい声と、アラーニャの艶やかな声の甘美なこと!



● ポアゾン・アリア(ジュリエットが毒を飲むシーン) アンナ・ネトレプコ



●フィナーレ





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