アルルの女(劇付随音楽) ビゼー
L'Arlésienne (musique de scène) Bizet
作品紹介(アルルの女)
ビゼーの「アルルの女」はオペラではなく、同名のドーデの戯曲のために作曲された、27曲からなる「劇付随音楽」です。
現在その戯曲自体が上演されることは滅多にないので、元々の全曲よりも、そこから抜粋して4曲ずつのオーケストラ曲に編まれた「第1組曲」(ビゼー自身が編纂)と、「第2組曲」(ビゼーの死後友人のギローが編纂)が有名です。特に、メヌエット、ファランドールなどは名曲として知られ、きっと誰もが聞いたことがあることでしょう!
元の戯曲はとんでもない悲惨な話で、全曲版の音楽は哀切な悲劇性を感じますが、組曲版はむしろ、南仏の明るい陽光を思わせる華やかさや、旋律のノスタルジックな美しさが際立つように思います。いずれにしても、メロディーメーカーであるビゼーの真価をよく伝える名作です。
ビゼーの友人ギローが、夭逝した親友の才能を惜しんで、見事な第2組曲に結実させた偉業にも心打たれます。
ギローが編纂した第2組曲のうち、有名な「メヌエット」だけはアルルの女からではなく、ビゼーのオペラ「美しきパースの娘」の中の2重唱のあまり目立たない対旋律からとられており、よくぞこんな名旋律を発掘した!と称賛したくなります。
また、同じく第2組曲の「間奏曲(インテルメッツォ)」の旋律に、ギローがミサ典礼文の歌詞を当てはめて「神の子羊(アニュス・デイ)」という敬虔な名歌に仕立て上げていて、これがまたビックリするほどピッタリで、今でも多くの歌手によって歌い継がれています。
まったくギローさんのセンスの良さは抜群で、彼自身の曲は今は殆ど知られていないのですが、他にもカルメンのレチタティーヴォ版を作ったり、ホフマン物語の補筆をしたり、パリ音楽院の教授としてドビュッシーなどを指導したり・・とフランス音楽史上の大変な功労者なのです。
このページでは、アルルの女の元々の全曲と、それぞれ第1組曲と第2組曲が全曲のどの部分からとられたかを掲載し、またメヌエットの原曲なども載せていますので、是非お聴き比べください。
あらすじ(アルルの女:戯曲版)
南仏の地主農家の息子フレデリは、街で見かけた美しいアルルの娘に恋焦がれて熱にうかされ、結婚したいと望みますが、家族からふしだらな女だと反対されます。一時は彼女を諦め、純情な村娘ヴィヴェットとの結婚を決めたフレデリですが、アルルの娘の情夫だという男が現れると嫉妬に狂い、祭りの晩、母親が追いすがるのを振り切って納屋の高窓から身を投げ命を絶ちます。
劇付随音楽 アルルの女(全曲)音源
ミシェル・プラッソン指揮、トゥールーズ・キャピトル管弦楽団の全曲盤CDより
(全曲再生リストはこちら → L'Arlésienne Op.23)
※赤字で示しているのが、第1・第2組曲に転用されている曲です。
※「メロドラム」とは、セリフや演技と同時に音楽を演奏する劇音楽のことです。
※幕の構成は「全5幕」と「全3幕5場」の2種類の解釈があり、ここでは5幕としています。
※この「初演版」は、少人数の管弦楽(27人)と合唱(24人)用に書かれています。
第1幕 (1)序曲‥‥‥第1組曲の「前奏曲」
第1幕 (2)メロドラム、(3)メロドラム、(4)メロドラム
第1幕 (5)合唱とメロドラム、(6)メロドラムと合唱のフィナーレ
第2幕 (7)パストラール(間奏曲と合唱)‥‥‥第2組曲の「パストラール」
第2幕 (8)メロドラム、(9)メロドラム、(10)メロドラム
第2幕 (11)合唱、(12)メロドラム、(13)メロドラム、(14)メロドラムと合唱(フィナーレ)
第3幕 (15)間奏曲、(16)フィナーレ‥‥‥第2組曲の「間奏曲(インテルメッツォ)」
第4幕 (17)間奏曲(メヌエット)、(18)間奏曲(カリヨン)‥‥‥第1組曲の「メヌエット」、「カリヨン」前後半部
第4幕 (19)メロドラム‥‥‥第1組曲の「カリヨン」中間部、「アダージェット」
第4幕 (20)メロドラム、(21)ファランドール(合唱つき)‥‥‥第2組曲の「ファランドール」
第5幕 (22)間奏曲、(23)合唱、(24)合唱、(25)メロドラム、(26)メロドラム、(27)フィナーレ
組曲版 アルルの女 音源
アルルの女 第1組曲・第2組曲 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリンフィル
■第1組曲(ビゼー編纂)
(1)前奏曲:0:00〜、(2)メヌエット:7:07〜、(3)アダージェット:9:59〜、(4)カリヨン:13:30〜
■第2組曲(ギロー編纂)
(1)パストラール:17:34〜、(2)間奏曲:23:22〜、(3)メヌエット:29:00〜、(4)ファランドール:33:03〜
第2組曲 メヌエットの原曲
第2組曲のメヌエットは、アルルの女からではなく、ビゼーのオペラ「美しきパースの娘」3幕の伯爵とマブの2重唱に重なるフルートのオブリガートからとられています。
美しい娘カトリーヌにご執心の好色伯爵が、自分の愛人マブがカトリーヌに変装してるとも知らずに熱心に口説き、マブは嫉妬にかられながらもなびいてしまうシーンです。
●1998年 コンピエーニュ帝国劇場(フランス)での上演
※このオペラの詳細は、「美しきパースの娘」のページをご覧ください。
第2組曲 間奏曲の旋律を元に作られた歌「神の子羊」
第2組曲の間奏曲(インテルメッツォ)のメロディーに、ギローがラテン語のミサ典礼文アニュス・デイの歌詞を後付けした歌ですが、元々この歌詞のために作られたとしか思えないほどピッタリで、神々しささえ感じるほど感動的です。
●ルチアーノ・パヴァロッティの素晴らしい名唱で。
※この曲の詳細は、神の子羊(アニュス・デイ)のページをご覧ください。