オランジュ音楽祭
Les Chorégies d'Orange
夏の間、都市のオペラハウスはシーズンオフになりますが、その代りヨーロッパ郊外のあちこちで音楽祭が開かれます。フランスオペラ好きにとって楽しみなのは、このオランジュ音楽祭。
フランス語で「コレジー・ドロンジュ」(Les Chorégies d'Orange)と発音され、毎年7〜8月に南仏オランジュの古代ローマの遺跡で開催されます。この野外劇場は2000年も前に建造された世界遺産ですが、後世に観客席が修繕されて現役の劇場として復活しています。
大昔の建造物なのに大変音響に優れ、あれだけ広い屋外の劇場なのに、8500席もあるどの席で聴いても、歌手の声が鮮明に聞こえるのだそうですよ。古代ローマ人、恐るべしですね。
野外なのに音がよく伝わるのは、不思議な仕組みがあるからだそうです。
劇場全体が石で造られているのですが、舞台後ろの巨大な石壁が、非常に優れた音の反響板となると共に、夜になると昼間に熱せられた石からの放射熱が夜の湿気を水蒸気として運ぶのに乗って、音が運ばれるのだそうです。とても神秘的な感覚だそうです!
真夏の南仏で、自然に囲まれた古代ローマの遺跡で聴くオペラなんて、本当に夢のようでしょう。私もいつか聴きに行くことが、ささやかな夢です。
同じフランスの音楽祭でも、エクサンプロヴァンス音楽祭はバロックオペラから現代ものや新作などもとり上げるのに対し、オランジュ音楽祭は何千人もの観衆を前に野外で上演されるという特性上、比較的ポピュラーな作品、ノーマルな演出が多く、アットホームな雰囲気が特徴です。普通のオペラハウスではあり得ない、演奏中のフラッシュピカピカとかも多いかわりに、常連歌手のアリアの後は大拍手と盛大なブラボーの嵐が温かくていいんですよね〜
オランジュ音楽祭はフランスの国営TVで全国に生中継されるため、YouTubeにもたくさんアップされています。
野外なので風が吹いており(ミストラルと呼ばれるフランス南部の地中海沿岸特有の風)、歌手たちの髪や衣装が風にそよいでいるので、すぐにわかります。時には強風に吹き飛ばされそうになりながら必死で歌ってたりして、それもまた一興。
こんなに風が吹く野外劇場でも、これだけレベルの高い歌唱が可能、というのも、ちょっと驚きです。(口や喉が渇くので歌手は本当に大変なのだそうです。水を常備しないと死ぬそうです)
というわけで、日本ではあまり馴染みのないこのオランジュの上演履歴と、出演歌手を書き連ねてみました。動画があるものは、リンクをつけています。
プログラム 1 | プログラム 2 | |
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2023年 |
カルメン(ビゼー) マリー=ニコル・ルミュー、ジャン=フランソワ・ボラス、イルデブランド・ダルカンジェロ |
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2022年 |
愛の妙薬(ドニゼッティ) フランチェスコ・デムーロ、プリティ・イェンデ、アーウィン・シュロット |
ラ・ジョコンダ(ポンキエッリ) サイオア・エルナンデス、クレモンティン・マルゲーヌ |
2021年 |
サムソンとデリラ(サン=サーンス) ロベルト・アラーニャ、マリー=ニコル・ルミュー → 動画(全曲) |
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2020年 |
※コロナのため来年に延期 |
※コロナのため中止 |
2019年 |
ギヨーム・テル(ロッシーニ) ニコラ・アライモ、アニック・マシス、セルソ・アルベロ → 動画 |
ドン・ジョヴァンニ(モーツァルト) アーウィン・シュロット、ナディーヌ・シエラ、カリーヌ・デエ |
2018年 |
メフィストフェレ(ボイト) アーウィン・シュロット、ユリア=モンゾン |
セヴィリアの理髪師(ロッシーニ) スパイアーズ、ペレチャッコ |
2017年 |
アイーダ(ヴェルディ) Elena O'Connor 、アルバレス |
リゴレット(ヴェルディ) ヌッチ、ナディーヌ・シエラ |
2016年 |
蝶々夫人(プッチーニ) ヤオ、ブライアン・イーメル |
椿姫(ヴェルディ) ダムラウ、メーリ、ドミンゴ |
2015年 |
イル・トロヴァトーレ(ヴェルディ) アラーニャ、ホイ・へー →動画 →動画(全曲) |
カルメン(ビゼー) カウフマン、ケイト・アルドリッチ → 動画 |
2014年 |
オテロ(ヴェルディ) アラーニャ、 インヴァ・ムラ →動画(全曲) |
ナブッコ(ヴェルディ) ギャグニッザ、キャリン・デエー |
2013年 |
仮面舞踏会(ヴェルディ) クリスティン・ルイス、ラモン・ヴァルガス → 動画 |
さまよえるオランダ人(ワーグナー) エギルス・シリンス、アン・ペテルセン |
2012年 |
トゥーランドット(プッチーニ) アラーニャ、リンドストロム → 動画 →動画2 →全曲1/2・2/2 |
ラ・ボエーム(プッチーニ)) グリゴーロ、インヴァ・ムラ → 動画 |
2011年 |
アイーダ(ヴェルディ) グバノヴァ → 動画 |
リゴレット(ヴェルディ) グリゴーロ、レオ・ヌッチ、チョーフィ → 動画 |
2010年 |
トスカ(プッチーニ) アラーニャ、ネーグルスタッド → 動画 |
ミレイユ(グノー) ナタリー・マンフリーノ、ラコニー → 動画 |
2009年 |
椿姫(ヴェルディ) グリゴーロ、チョーフィ → 動画 |
カヴァレリア・ルスティカーナ(マスカーニ)・
道化師(レオンカヴァッロ) アラーニャ、ユリア・モンゾン、インヴァ・ムラ → 動画(道化師) 動画(カヴァ) |
2008年 |
カルメン(ビゼー) ユリア・モンゾン、マルセロ・アルバレス → 動画 |
ファウスト(グノー) アラーニャ、インヴァ・ムラ、ルネ・パーペ → 動画 |
2007年 |
蝶々夫人(プッチーニ) ヴィッラロエル、マルコ・ベルティ (指揮:佐渡裕) |
イル・トロヴァトーレ(ヴェルディ) アラーニャ、スーザン・ネヴィス → 動画 |
2006年 |
アイーダ(ヴェルディ) アラーニャ、インドラ・トーマス → 動画 |
ランメルモールのルチア(ドニゼッティ) チョーフィ、ヴィリャソン |
2005年 |
ラ・ボエーム(プッチーニ) アラーニャ、アンジェラ・ゲオルギュ → 動画→ 動画(全曲) |
ホフマン物語(オッフェンバック) ハドック、ロラン・ナウリ、ランカトーレ、インヴァ・ムラ、ユリア・モンゾン |
2004年 |
カルメン(ビゼー) アラーニャ、ユリア・モンゾン、アンセルム → 動画1 → 動画2 |
ナブッコ(ヴェルディ) スーザン・ネヴィス、ユリア・モンゾン、ATANELI |
2003年 |
椿姫(ヴェルディ) インヴァ・ムラ、ヴィラソン |
オテロ(ヴェルディ) ガルージン、タマール・イヴェリ → 動画(全曲) |
2002年 |
ロメオとジュリエット(グノー) アラーニャ、ゲオルギュー、ルネ・パーペ →動画 → 動画2 |
魔笛(モーツァルト) イソコスキ、KUTAN、SILVASTI、ルネ・パーペ |
2001年 |
ドン・カルロ(ヴェルディ) |
リゴレット(ヴェルディ) アイーダ(ヴェルディ) Manon Feubel,Dolora Zajick |
2000年 |
トスカ(プッチーニ) ミリチオウ、ガルージン |
ホフマン物語(オッフェンバック) ハドック、ジョゼ・ヴァン・ダム、ヴァドゥヴァ、ナタリー・デッセイ、ユリア・モンゾン → 動画1 → 動画2 |
1999年 |
椿姫(ヴェルディ) マルセロ・アルバレス、スウェンソン |
ノルマ(ベッリーニ) |
1998年 |
カルメン(ビゼー) ユリア・モンゾン、ヴァドゥヴァ、Sergej LARIN |
ナブッコ(ヴェルディ) → 動画(全曲) |
1997年 |
ランメルモールのルチア(ドニゼッティ) フランシスコ・アライサ |
トゥーランドット(プッチーニ) トリスタンとイゾルデ(ワーグナー) |
1996年 |
ドン・ジョヴァンニ(モーツァルト) ルッジェーロ・ライモンディ、フルラネット |
運命の力(ヴェルディ) |
1995年 |
アイーダ(ヴェルディ) |
リゴレット(ヴェルディ) ジャン=フィリップ・ラフォン、アラーニャ → 動画(音のみ) → 音のみ2 |
1994年 |
ナブッコ(ヴェルディ) レナート・ブルゾン、サイモン・エステス |
トスカ(プッチーニ) JONES、GIACOMINI、ジョゼ・ヴァン・ダム |
1993年 |
椿姫(ヴェルディ) CASSELLO、アラーニャ → 動画 |
オテロ(ヴェルディ) ドミンゴ |
1992年 |
カルメン(ビゼー) 二ール・シコフ、HARRIES、バーバラ・ヘンドリクス |
イル・トロヴァトーレ(ヴェルディ) |
1991年 |
エレクトラ(シュトラウス) |
アイーダ(ヴェルディ) |
1990年 |
ドン・カルロ(ヴェルディ) |
ファウスト(グノー) リチャード・リーチ、ジョゼ・ヴァン・ダム、SPERIAN |
★オランジュ音楽祭の公式サイトはこちら → Chorégies d'Orange