月世界旅行 (オッフェンバック)
   Le Voyage dans la Lune (Offenbach)


作品紹介(月世界旅行)

今から150年も前(1875年初演)に「月へ旅するSFオペラ」とは斬新で、さすがは進取の気性に富むオッフェンバック。
にんじん王」などと同様のメルヘン冒険譚で、大掛かりな舞台装置で観客を驚かせ楽しませ、大ヒットであったそうです。今ならさしずめハリウッドSF映画、って感じでしょうか。

フランスの作家ジュール・ヴェルヌの小説「地球から月へ」等に着想を得ているそうですが、ストーリーはオリジナル。王様と王子、科学者の3人が大砲の巨弾に乗って月に飛んでいき、月の住人と遭遇しラブストーリーもあり、の楽しいオペレッタです。

音楽は徹頭徹尾明るく軽快で賑々しく、とにかく楽しい! 特にバレエ音楽「パリの喜び」に転用されているので有名な「雪片のバレエ」のキレのよさといったら抜群で、最後の「ギャロップ」(序曲後半と同じ音楽)はまさに傑作、この音楽での圧巻のフレンチカンカンは痺れますー!(下に載せてるジュネーブの動画のラスト)

また、このオペレッタ序曲のホルンの旋律が、後にホフマン物語のアリア「煌めけダイヤモンド」に流用され、長年名曲として親しまれていました。(ただし近年、オッフェンバックの死後にガンズブール氏が補作したアリアであることが判明し、別の本来のアリアでの上演が増えている)

日本ではあまり馴染みのない作品ですが、フランス語圏では時々上演されて動画もいくつも出ており、2022年にはブリュ・ザーネレーベルから全曲盤のCDも発売されています。

なお、下記に掲載した2種類の全曲動画では共に、カプリス王子を男声(テノール)が演じていますが、本来は女声(ソプラノ)が当てられているズボン役です。男声だとリアルな感じで、女声の王子だとメルヘン感が強まるかな、と思います。


あらすじ(月世界旅行)

とある国の王ヴランはそろそろ引退しようと考え、遊学から帰った息子カプリス(Caprice:気まぐれの意)に王位を譲ろうとしますが、王子はまだ自由に遊びたいと受入れません。「僕はもうアフリカも北極もアメリカもメゾンドール(パリの有名レストラン)も知ってるから、次は月に行ってみたい!」と駄々をこねます。そんな無茶なと思いつつワガママ息子に押し切られ、天文学者ミクロスコープのアイデアで巨大大砲のカプセルに乗って息子とミクロスコープと3人で月へと打ち上げられます。

月では、コスモス王のもと、ポポット王妃、ファンタジア王女ら月の住人たちが暮らしています。突然現れた地球からの侵入者に驚き警戒しますが、王女のとりなしで投獄を免れ、カプリス王子はファンタジア王女に一目惚れ!しかしいくら口説いても反応はナシ。なんと、月の世界では恋愛は厳禁で、誰も愛し合うことはないというのです。驚いたヴラン王が「ではどうやって子孫を作るのか」とコスモス王に問えば、子供は子作り専門の住人のいる地域から買ってくると!落胆した王子が地球から持ってきた残り少ない食糧のリンゴを食べていると、王女が珍しい食べ物に興味を示します。試しに一口食べるとあら不思議!禁断の果実を食べたイヴよろしく身体に愛の息吹が芽生え、カプリスと愛を交わします。

しかし、娘が禁じられた恋愛を犯したと知った月の王は激怒、娘を市場に売り飛ばしてしまいます。なんとか王女を助けようとカプリスはリンゴ酒を月の王に飲ませたところ効果てきめん、愛を知った王は初めて王妃を愛します。ところが同じくリンゴ酒を飲んだ王妃は目の前にいたミクロスコープに恋してしまい、王妃に拒絶されたコスモス王はますます激怒。地球人3人を捕らえ、裁判の結果火山の中に5年間の刑になります。火山に降りるカゴに3人と一緒に乗り込んだコスモス王は、戻るためのロープが王妃によって切られたことに気づきます。そして、ファンタジア王女もカプリスと一緒にコッソリ乗り込んでいました。なんとか火山から脱出しなければ!うまく脱出できたら地球人を赦す、と約束したところで死火山と思っていた火山が大噴火を起こし、5人は天高く放り出されます。溶岩が流れ灰が降り注ぐ中、全員の無事を確認して喜び合った5人は、空に美しい地球が昇ってくるのを感無量で見つめます。

※原語リブレットはこちら → Le Voyage dans la Lune



お薦め動画

●全曲 2021年 パリ・オペラコミック座 演出:ロラン・ベリー

コロナ禍で無観客で上演収録された映像です。かなり短縮カットされていはいますが、最新の鮮明な映像が見られるのは素晴らしい!
ヴラン王役は、フレンチオペレッタに欠かせないキャラクターテノール、クリストフ・モルターニュ氏。ロラン・ペリーの月の住人の衣装がとても洒落ていて、パリコレに出てもいいくらい?ラスト、月の空に美しい地球が昇るシーンは感動的です。



●3幕 Il Neige! Nous grelottons! 「雪だ!震えちゃう!」
月の季節は急に変わり、突然の雪にブルブル震えながら皆で歌う楽しい歌



●全曲 1985年 ジュネーブ大劇場
この演出はすごい!とにかく派手で軽薄で、パリのキャバレーのような賑々しいバカバカしさ満点。これは正しくオッフェンバック的かも?ただし終盤のストーリーが本来の脚本と全然違っているようで、月の住人たちが地球に来て大バカ騒ぎで幕を閉じます。 フィナーレが、本来は3幕にある雪片のバレエの音楽でのカンカンで、これが大盛り上がりで素晴らしい!!今まで見たカンカン動画の中でこれが最高かも。(カンカンは02:42:44~)



●抜粋 2014年 オペラ・フリブール(スイス)
こちらはカプリス王子を本来の女声が演じています、軽やかで明るい演出でいい感じ



●序曲 ホルンの旋律がホフマン物語のアリア「煌めけダイヤモンド(ガンズブール作)」に流用されて有名になった曲です。後半はバレエ音楽のフィナーレ(ギャロップ)と同じ曲。



●3幕 雪片のバレエ 6曲構成、約10分の豪華なバレエ。
(1)序奏と青いツバメ、(2)雪だるま~舞い散る雪、(3)ポルカ、(4)マズルカ、(5)バリアシオン、(6)ギャロップ(フィナーレ)
バレエ音楽「パリの喜び」にも採用されているので聞き覚えのある、生き生き闊達な素晴らしい音楽です。





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