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作曲者別

ファウスト (グノー) 
    Faust (Gounod)



作品紹介(ファウスト)

グノーの「ファウスト」は、全編が豊麗な美しいメロディーに満ち、フランス音楽ならではの香気溢れる傑作です。19世紀フランスオペラの真髄を聴く思いがします。

原作はゲーテの長編文学ですが、そのドイツ的な難解な原作は適度に(十分に?)フランス化されていて、長大な物語の中の一部分、「グレートヒェン悲話」の章をとり上げて、せつなく甘やかに、そして痛切に綴られています。(グレートヒェンとはマルガレーテの愛称。「糸を紡ぐグレートヒェン」等のタイトルで多くの作品が作られているのも、同じ題材です)

悪魔に魂を売り渡して若さを手に入れたファウスト博士と、無垢なマルガレーテの恋と悲劇の物語は、グノーの流麗な音楽と相まって、甘美の極み!

マルガレーテの「トゥーレの王」や「宝石の歌」、ファウストの「この清らかな住まい」、メフィストフェレスの「金の仔牛の歌」、「悪魔のセレナーデ」、そして兵士の合唱やフィナーレの3重唱など、名曲が次から次へと続き、オーケストレーションも輝かしく豊潤で、本当に素晴らしい作品です。

グノーは有名な「アヴェ・マリア」や、聖チェチリア荘厳ミサなどのように、清廉な信仰心に満ちた温かい音楽が特徴の作曲家です。親しみやすいけれど洗練されたメロディーや、輝くように美しい対旋律(オブリガート)がとても印象的です。特にこのファウストは、アリアだけでなくレチタティーボの隅々にいたるまで全て美しい。

宗教家になるか音楽家になるか迷ったという純真なグノーらしく、最後にマルガレーテが神にすべてを託して昇天していくシーンは、彼の「信仰宣言」ともいえるような感動的な幕切れで、ここでのマルガレーテ、ファウスト、メフィストフェレスの3重唱はオペラ有数の名シーンだと思います。

なお、ファウストの中のバレエ音楽は、よくアマチュア楽団などで演奏される平易な曲ですが、これはオペラの初演後10年もたってからオペラ座で上演するために無理に追加した曲で、(オペラ座での上演はバレエつきのGrand Opera様式である必要があったため)、グノーの弟子の作との説もあります。確かに本編とは音楽の完成度がだいぶ違うし、また緊迫した悲劇的ストーリー展開の妨げにもなるため、少し前まではオペラ上演時にこのバレエはほとんど付加されていませんでした。

しかし、2004年にマクヴィカーの演出で強烈な振付のバレエが挿入され、そのあまりに驚愕する天才的バレエで一躍ファウストの目玉にのしあがってしまいました。今も繰り返し上演されているプロダクションですが、エログロなのに感動する、というあり得ない凄い演出で、これならバレエの入る必然性もあるなあ・・(もちろん賛否両論あります。おすすめ動画(2)に載せています) こんな風に、初演後150年以上もたってから、新しい息吹がふきこまれるって、オペラってすごいですね。

お薦め動画

→ おすすめ動画(1) 1975年パリ・オペラ座 ニコライ・ゲッダ

→ おすすめ動画(2) 2004年、2008年、2011年 ロベルト・アラーニャ


あらすじ(ファウスト)

(1幕)
真理の探究に人生を費やしてきたファウスト博士は、年老いて絶望し、服毒自殺をはかろうとします。しかし部屋の外から若者たちの希望に溢れた歌声が聞こえてきて、死にきれず、現れた悪魔(メフィストフェレス)に「何でもお望みを叶えましょう。名声ですか、富ですか」と問われ、「そんな物!私が欲しいのは若さだ!」と答えてしまいます。

「結構、結構」と喜んだメフィストに美しいマルガレーテの幻想まで見せられたファウストは、魂と引替えに若さと青春を取り戻す契約をしてしまいます。魔法の薬で若々しい容貌に変身したファウストは、メフィストと共にこれから始まる冒険に胸躍らせて高らかに歌い、出発してゆきます。

(2幕)
2人は、兵士や学生、娘たちが賑やかに歌い騒ぐ町に到着します。(群舞、合唱)

メフィストはそこで歌を披露したり(金の仔牛の歌、メフィストの魅力を存分に発揮する曲です)、町の人たちに不吉な予言をしたりして怪しまれるのですが、やがてたくさんの娘たちの中に現れたマルガレーテの美しさに、ファウストは心を奪われます。

「美しいお嬢さん・・お送りいたしましょう」とファウストは声をかけますが、彼女は恥じらって「いいえ・・私は美しくなんてありません。お嬢さんでもありませんわ、送って頂かなくて大丈夫です」と答えます。
「どうしたの?」「マルガリーテが素敵なセニョールを振ったのよ!」との噂の中、目も眩むほど踊る群衆で幕。

(3幕)
マルガリーテに恋する青年シベールは、彼女の窓辺に可憐な花を置きます。対抗するメフィストは、豪華な宝石箱を部屋の前に置き様子を伺います。マルガリーテの家の清楚なたたずまいに感激したファウストが歌う「この清らかな住まい※」は、フランスオペラのテノールのアリアで屈指の名曲。

やがて「トゥーレの王」を歌って登場したマルガリーテは、宝石箱を見つけて驚き、あまりの美しさに思わず手にとって華やかな「宝石の歌」を歌います。それを見咎めた近所のおばさんマルトを、メフィストが上手いこと誘惑して連れ出し、ファウストとマルガレーテを二人にさせます。(2組の男女の駆け引きシーンは、モーツァルトのコシファントゥッテとかのパロディ風になっていて楽しい)

ファウストの熱烈な求愛に心が動くマルガレーテも、やがて「もう夜ですから・・」、と部屋に帰ってしまいます。ファウストも帰ろうとするとメフィストが現れ、「なんて馬鹿なんです!まったくあなたは、もう一度学校に行く必要がありますね!」と呆れ、「見なさい、彼女が窓を開けましたよ」。

窓を開けて夜空に「明日になればまたあの方に会えるわ!」と恋心を歌うマルガレーテの姿に感極まったファウストは、「マルガレーテ!」と叫んで駆け寄り、抱きしめられた彼女はファウストを部屋に迎え入れてしまいます。

メフィストの勝利の瞬間。甘美な漆黒の夜に、悪魔の笑い声が響きます。

(4幕)
熱烈な恋の果てに捨てられたマルガレーテは、ファウストの子を身ごもって泣いています。来ない人を想い続け、糸を紡ぎながら歌います。周囲の人々から嘲笑され、絶望と罪の意識にさいなまれるマルガレーテは教会で祈りますが、そこにもメフィストフェレスの罵り声が忍び寄り、渦巻き、「地獄に落ちよ!」の声に彼女は気を失ってしまいます。

「兵士の合唱」と共に、出征していたマルガレーテの兄(ヴァランタン)が戦場から帰ってきますが、自分がいない間に妹の身におこったことを知って激しく怒ります。メフィストフェレスが戯れのセレナードを歌ってマルガリーテを嘲笑っていると、ヴァランタンが現れファウストに決闘を申し込みます。気がすすまないファウストですが、メフィストに「私が助けます」と言われて手をくだしてしまい、ヴァランタンは倒れます。駆けつけたマルガリーテを呪いながら絶命するヴァランタン。

(5幕)
メフィストは、ファウストを引き回して次々と快楽の限りを体験させます。ワルプルギスの夜、世界中の魔女や美女が集う宴にも連れ出しますが(バレエが入る場合はここに入り、魔女美女たちが踊ります)、しかし酒池肉林の中でもファウストはマルガレーテを忘れることができず、メフィストを振りきって彼女の元へ向かいます。

その頃マルガレーテは心を病み、生まれた子を殺した罪で投獄されていました。牢獄に駆けつけたファウストの呼ぶ声を聞き「ああ、愛するあなたなのね!これで私は救われる!」と喜びますが、「一緒に逃げよう!」と懇願するファウストに、「ノン」と繰り返し、遠い目で恋の日々を懐かしんで歌うばかり。

二人がはじめて出会った通りの思い出、愛し合った夜の庭に咲く花の香り・・・いったいマルガリーテは捨てられてから今まで、嘲笑の中で、獄中で、何百回何千回このことだけを想い出していたのでしょう。「ああ、彼女は僕の声が聞こえていない!」と絶望するファウスト。

やがてメフィストが現れ、「もう夜が明ける、時間がない!」と迫るのですが、マルガレーテの目には彼が悪魔であることがはっきりと見え、「邪悪な悪魔!ここから出て行って!」と毅然として拒絶。ファウストとメフィストに再三逃亡を迫られながらも、全身全霊で 「天使様、私を神様の元にお連れください。神様、すべてあなたにお委ねいたします、どうかお救いください!」と歌いあげ、息絶えます。

「裁きがくだった!」と宣告するメフィストの声の一瞬後に、天上から「救われたのです!」という声がします。清らかな天使の大合唱が響く中、茫然としたファウストを残し、マルガレーテの魂は天国へと昇ってゆきます。


※「この清らかな住まい」の歌詞と訳、カタカナ読みを、カラオケ de フランスオペラのページに載せています。




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