ペレアスとメリザンド (お薦め動画)
この「ペレアスとメリザンド」は幻想的な美しい作品であるため舞台演出が難しく、なかなかイメージ通りの演出が少ないだけでなく、作品の本質と離れたヘンテコ演出も多いのが困り物です。
メリザンドが悪意をもってゴローやペレアスを誘惑したり、アルケル王がメリザンドに欲情したり・・という演出は、どう考えても作品を曲解した劣悪なプロダクションで、そういう上演や映像を見てこのオペラを評価されるのは悲しいです。
お薦めしたいのは、2009年にナタリ・ドゥセがメリザンドを演じている映像と、2017年パトリシア・プティボンがメリザンドを演じている映像。二人ともフランスのコロラトゥーラの歌姫で、可憐な声と美しいフランス語が共通です!
→ ペレアスとメリザンドの作品紹介と詳しいあらすじはこちらから
●全曲 2017年 シャンゼリゼ劇場 演出:エリック・リュフ、パトリシア・プティボン、ジャン=セバスチャン・ブ、カイル・ケテルセン
主役3人が揃ってハマり役で、奇をてらわない演出と誠実な演技がこのオペラのあるべき姿に近い映像です。シャンゼリゼ劇場での上演でフランスらしさも充分。
ほぼ仏人キャストの中、ゴローのカイル・ケテルセンはアメリカ人だけどいい味出してます。
プティボンは赤毛なので、塔のシーンの滝のように流れる黄金の髪が赤いのが難だけど、ま、仕方ないかー
●2009年 ナタリ・ドゥセ、 ロラン・ナウリ、ステファン・ドゥグー
ナタリの声はメリザンドにピッタリ。華奢で儚く、どこか幼さの残る謎めいた雰囲気も本当にピッタリです。
ロラン・ナウリも上手い!明瞭なフランス語がかっこよく、冒頭の森のシーンなど、まさにイメージ通りでゾクっとくるほど。
●ペレアスでハマり役と思うのがこのジャン=フランソワ・ラポワント。
バリトンですが柔らかい甘さのある声とネイティブの仏語、美しい容姿がペレアスにピッタリ。
(ペレアス役は、「テノールあるいはバリトン」という指定ですが、バス声のバリトンではゴローと違わなくなってしまうので、やはり甘い輝きのある若々しいバリトンかテノールがよいと思います!)
ゴローのナウリ、メリザンドのコジェナーと共に、とても魅惑的な雰囲気を醸し出しています。
●パリ・オペラ座 演出:ロバート・ウィルソン
これは有名なプロダクションで、何度も再演されDVDにもなっていますが、ちょっと特殊な演出。独特のゆっくりな動きと無表情な静止ポーズで演じる、能のような不思議な舞台で、ドビュッシーの音楽に合っているかは意見の分かれるところ。
ロシアのソプラノ、エレナ・ツァラゴワの当たり役です。